【レビュー】コンパクトなアルミボディにAMDの最新SoCを搭載したミニPC「GEEKOM A8」
ミニPC業界のパイオニアで今年で創立21周年を迎える台湾のGEEKOMより、先月に発売したばかりの最新ミニPC(NUC)の「GEEKOM A8」を提供頂いたのでレビューをお伝えします。
「GEEKOM A8」は手の平サイズの筐体に、AMDが昨年末に発表したAI PC向けのSoC「Ryzen 8040」シリーズの最上位モデルである「Ryzen 9 8945HS」と「Ryzen 7 8845HS」を搭載した最新のミニPCで、両プロセッサとも組み込まれたNPUが画像認識や音声処理などのAIコアタスクにおいて、高速かつ省エネのパフォーマンスを提供し、先進的なAIアプリケーションに対応します。
今回、レビューをお伝えするのは「GEEKOM A8」の中でも下位モデルに位置する「Ryzen R7-8845HS + 32GB + 1TB」のモデル。本体サイズは112.4×112.4×37㎜で、容積換算すると約0.47Lとなり、手の大きな男性であれば手の平に隠れてしまうかどうかといったくらいのコンパクトさが特徴。
外観や内部構造
まず同梱品は写真左上から時計回りで、本体、電源ケーブル、ACアダプター、VESAマウンタとネジ、HDMIケーブル。
電源ケーブルのコンセントがアース付きの3Pタイプなので、国内で使用するには変換プラグが必須。ここは国内向けには2Pタイプのものを同梱して貰えると有り難い。
本体重量は実測430g(公称値は450g)で軽いが、この本体サイズなので電源は内蔵しておらず、120WのACアダプターが別途付属しています。ACアダプターのサイズは約97×63×22㎜で、重さは約380g。
全体的なデザインはアルミ製の筐体を使用しており、Appleの「Mac mini」をよりコンパクトにした感じ。
前面には電源ボタンに加え、USB-A(USB 3.2 Gen 2 / Power Delivery対応)とUSB-A(USB 3.2 Gen 2)が1つずつに加え、3.5㎜ヘッドセット端子。
背面には左から電源入力、USB-C(USB 4 Gen3 / PD対応)、HDMI 2.0、有線LAN(2.5Gbps)、USB-A(USB 3.2 Gen 2)、USB-A(USB 2.0)、USB-C(USB 3.2 Gen2 / PD対応)、HDMI 2.0。2つのHDMIと2つのUSB-Cポートを利用することで最大4つのディスプレイに出力が可能。
左側面にはメッシュ状の通気口に加え、SDカードスロットを搭載。
右側面はメッシュ状の通気口のみ。
底面はVESAマウントを取り付けるためのネジ穴がある他、4つのゴム足が取り付けられており、安定性は問題なし。
4つのゴム足はツメではめ込んであると共に両面テープで接着されていますが、指で引っ掻くようにすると簡単に外せ、ゴム足を外して現れるネジを取り外すことで内部にアクセス可能。
ネジは通常のプラスネジなので別途特殊ドライバーを用意する必要がないのは良いところ。内部の各種パーツも全てプラスネジとなっています。
底蓋を取り外すとアンテナケーブルが蓋に接続されているので、開封する際は注意が必要。金属製のカバーに覆われているが、こちらもプラスネジを4箇所外すだけで取り外すことが可能。
金属製カバーの裏面にはグラファイトシートが貼られている他、SSDが接触する部分にはサーマルパッドが貼られています。
RAM(メモリ)はCrucial製で、「CT16G56C46S5」という型番の16GB DDR5-5600 SODIMMが2枚搭載されています。
SSDはWoopositというメーカーの2280サイズのM.2 SSD(NVMe PCIe Gen4 x4)が搭載されており、レビューしたモデルは1TBですが、最大2TBまで搭載可能。スロットはこの1つだけで、換装は出来るものの、増設は不可。
ちなみにこのWoopositというメーカー、検索してみるとRAMでは多数ヒットするものの、SSDではあまり情報がないのが現状。
Wi-Fi/BluetoothモジュールはSSDの下に搭載されており、Azurewaveの「AW-XB591NF」(中身はMediaTek MT7922A22M)が搭載されています。Wi-Fi 6EとBluetooth 5.2に対応。
下記は「GEEKOM A8」の実際の大きさが分かり易いよう、「iPhone 15 Pro」や「ICカード(PiTaPa)」と比較してみたもので、その小ささが良く分かります。
スペック
「GEEKOM A8」は上述した通り、AMDの最新世代のSoC「Ryzen 8040」シリーズ(開発コードネーム:Hawk Point)の最上位モデルである「Ryzen 9 8945HS」と「Ryzen 7 8845HS」を搭載しています。どちらも8コア/16スレッドのCPUと内蔵GPUとして「Radeon 780M」を搭載しており、違いはCPUとGPUの動作周波数で、「Ryzen 7 8845HS」はCPUのベース周波数が3.8GHz、ターボ時最大が5.1GHzとなっているのに対し、「Ryzen 9 8945HS」はベース周波数は4.0GHz、ターボ時最大は5.2GHzと少し引き上げられており、「Radeon 780M」の動作周波数も2700MHzと2800MHzで100MHzの差があります。
また、NPU(ニューラル プロセッシング・ユニット)も統合されており、NPUの性能は16TOPS(1秒間に16兆回の演算性能)で、NPUによるAI処理に加え,CPUとGPUによるAI処理性能を総合した「Ryzen AI」の総合性能は36TOPSとなっています。
搭載SoCのスペック比較表
Ryzen 9 8945HS | Ryzen 7 8845HS | |
---|---|---|
CPU/スレッド数 | 8/16 | 8/16 |
ターボ時最大 | 5.2GHz | 5.1GHz |
ベース周波数 | 4.0GHz | 3.8GHz |
L2キャッシュ | 8MB | 8MB |
L3キャッシュ | 16MB | 16MB |
TDP | 45W | 45W |
cTDP | 35~54W | 35~54W |
GPU | Radeon 780M | Radeon 780M |
GPUコア数 | 12 | 12 |
GPU周波数 | 2800MHz | 2700MHz |
「GEEKOM A8」には今回レビューをお届けしている「Ryzen R7-8845HS + 32GB + 1TB」に加え、上位モデルの「Ryzen R9-8945HS + 32GB + 2TB」の計2モデルが用意されており、SoCとSSDの容量以外のスペックは両モデルとも同じ構成。
また、OSには「Windows 11 Pro」が搭載されており、「Windows 11 Pro」のライセンス形態は「OEM」となっていることを確認済みです。
GEEKOM A8の主なスペック
本体サイズ | 112.4×112.4×37㎜ |
CPU | AMD Ryzen 7 8845HS AMD Ryzen 9 8945HS |
GPU | AMD Radeon 780M |
RAM | 32GB DDR5 262pin 5600MHz SODIMM (最大64GB) |
ストレージ | 1 x SSD NVMe x4 Gen 4 (最大2TB) |
オーディオ | HDA CODEC |
ポート (後部) | 1 x USB 3.2 Gen 2 タイプA 1 x USB 2.0 タイプA 1 x USB 3.2 Gen 2 タイプC (Power Delivery 対応) 1 x USB 4 Gen3 タイプC (Power Delivery 対応) 1 x RJ45 RTL8125BG-CG 2 x HDMI 2.0 1 x DC入力 1 x Kensington Lock 1 x SDカード |
ポート (前面) | 1 x USB 3.2 Gen 2 タイプA (Power Delivery 対応) 1 x USB 3.2 Gen 2 タイプA 1 x 3.5㎜ ステレオヘッドセットジャック 1 x 電源ボタン |
イーサネット | Intel 10/100/1000/2500 Mbps |
Wi-Fi | Wi-Fi 6E |
Bluetooth | Bluetooth 5.2 |
OS | Windows 11 Pro |
各種ベンチマーク
実機で測定した各種ベンチマークソフトウェアの結果を紹介します。
PC Mark 10
「PC Mark 10」はPCのアプリケーション実行における総合的なパフォーマンスを計測するベンチマークソフトで、日常的なPCでの作業やデジタルコンテンツを操作するときの性能に焦点を当てたテストとなっています。
スコア | 7299 |
CINEBENCH R23
「CINEBENCH R23」はCGレンダリング速度からCPU性能を測定するベンチマークで、CGレンダリングはマルチスレッド処理向きの作業であることからコア/スレッド数が多ければ多いほど性能が高くなる他、動作周波数に比例して性能が上がる傾向もあり、CPUの最大性能を比較するのに最適なベンチマーク。
結果は下記の通りで、参考までに「Intel Core Ultra 5 125H」と同等レベルのスコアとなっています。
テスト項目 | スコア |
---|---|
CPU (シングルコア) | 1713 |
CPU (マルチコア) | 14790 |
GeekBench 6
「GeekBench 6」はCPU性能をメインで測定するベンチマークソフトで、シングルコアとマルチコアのスコアの他、GPU性能を測定するベンチマークとして「OpenCL」のスコアも測定可能。
GeekBenchのベンチマークはプロセッサごとのランキングが公開されており、他のプロセッサとのスコアの差など、ランキングの詳細はこちらをご覧下さい。また、OpenCLのスコアのランキングはこちら。
テスト項目 | スコア |
---|---|
CPU (シングルコア) | 2628 |
CPU (マルチコア) | 13327 |
GPU (OpenCL) | 30234 |
CrystalDiskMark 8.0.5
「CrystalDiskMark 8」はストレージのデータ転送速度を測定できる定番ベンチマークソフトで、キューやスレッドの数を指定したシーケンシャルリード&ライト、ランダムリード&ライトの計測が可能。
シーケンシャルリードが約4900MB/s、シーケンシャルライトが約4300MB/sといった結果で、NVMe x4 Gen 4の理論値(最大8GB/s)には及ばないものの、通常の使用であれば特に問題ない速度。
3D Mark
「3DMark」はハイエンドPCからタブレットPCまで利用できる定番3Dベンチマークソフト。DirectX 12を利用したベンチマークなどが用意されており、各テストの測定内容とスコアは下記の通り。
- Time Spy:ゲーミングPC向けのDirectX 12ベンチマーク
- Night Raid:「Time Spy」よりも軽量化されたテスト、CPU統合グラフィックスを備えた軽量デバイス向けのDirectX 12ベンチマーク
- Speed Way:ゲーミングPC向けのDirectX 11ベンチマーク
- Steel Nomad:「Time Spy」に代わるベンチマークで、非レイトレーシングゲームの性能を測定するための推奨ベンチマーク
- Steel Nomad Light:CPU統合グラフィックスを備えた軽量デバイスの性能を測定するための推奨ベンチマーク
スコア | |
---|---|
Time Spy | 3128 |
Night Raid | 24795 |
Fire Strike | 7613 |
Steel Nomad | 502 |
Steel Nomad Light | 2742 |
FINAL FANTASY XV
2018年に発売された重量級のアクションRPG「Final Fantasy XV」のPC版が快適に動作するか否かを推し量るためのベンチマーク。内蔵GPUなので「軽量品質 / 1920×1080 ウインドウ」といった設定でようやく動くといった感じ。標準品質だとベンチマーク中も動作がカクカクすることも多々あり。
設定 | スコア | 評価 |
---|---|---|
標準品質 / 1920×1080 ウインドウ | 2843 | やや重い |
軽量品質 / 1920×1080 ウインドウ | 3057 | 普通 |
ファイナルファンタジーXIV 黄金のレガシー
「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー」を動作させた場合のパフォーマンスの指標となるスコアを測定出来るベンチマーク。「Final Fantasy XV」と同じく解像度は”1920×1080″でなければプレイは厳しく、「1920×1080 標準品質 (デスクトップPC)」の設定でようやくプレイ出来るといった状況。
設定 | スコア | 評価 |
---|---|---|
3840×2160 高品質 (デスクトップPC) | 731 | 動作困難 |
3840×2160 標準品質 (デスクトップPC) | 995 | 動作困難 |
3840×2160 標準品質 (ノートPC) | 1049 | 設定変更が必要 |
1920×1080 高品質 (デスクトップPC) | 2800 | 設定変更を推奨 |
1920×1080 標準品質 (デスクトップPC) | 4428 | 普通 |
ドラゴンクエストX
上記のFFシリーズのベンチマークよりも軽い「ドラゴンクエストX」のベンチマークのスコアは「最高品質 / 3840×2160 / ウインドウ」でもスコアが4959で、評価は”普通”でした。解像度は同じで標準品質に落とすと、スコアは5633と少し上がり、評価も”快適”に。
さらに、フルHD解像度(1920×1080)で最高品質に設定したところ、スコアは12575で、評価は”すごく快適”となり、このレベルのPCゲームであれば性能を気にせずプレイ可能。
設定 | スコア | 評価 |
---|---|---|
最高品質 / 3840×2160 / ウインドウ | 4959 | 普通 |
標準品質 / 3840×2160 / ウインドウ | 5633 | 快適 |
最高品質 / 1920×1080 / ウインドウ | 12575 | すごく快適 |
まとめ
ベンチマーク結果からはゲームは設定次第ではプレイ可能といった感じで、実際に使用してみた感じとしては、一般的な事務作業や動画を見たり、Webブラウジングするといった使用用途ではかなり快適に使用でき、簡易的な写真編集や動画編集なども十分にこなせるパワーを持っています。
気になったのは筐体が小さいことから熱がかなり籠もることで、ベンチマークテストなどを行っている際は表面は触れるか触れないかくらいまで熱くなり時があります。筆者はミニPCを使用するのがこれが初めてなので、その程度の熱は許容範囲内である可能性があり、筐体全体を使って上手く放熱が出来ているということだと思いますが、状況によってはサーマルスロットリング(CPUなどの温度が上昇しすぎた際に自動的に性能を抑えることで、過度な温度上昇を防いでくれる機能)が発生し、パフォーマンスに影響が出る可能性を懸念してしまいます。
また、もう1つ気になったのはファンの音で、通常利用時は20dBほどでほぼ何も聞こえないのですが、少しでも負荷がかかる作業となると40dBくらいまで上昇し、「サー」というファンの動作音がかなり気になります。これに関しては、筆者自体がファンレスに慣れてしまっているので過剰なのかもしれないのと、ミニPCは基本的にデスク上のモニター横に置いて使うことが多いので、余計にファンの音が聞こえて気になるのかもしれません。
ただ、これら気になる点についてはどちらも高負荷になった際の問題で、元々高負荷になるような作業をすることを目的としたPCではない為、多くのユーザーにとってはあまり気にしなくても良いと思います。
場所を取らずにどこでも設置することができる手の平サイズのコンパクトな筐体に最新のSoCや32GB RAM、1TB/2TBストレージを搭載し、デザイン面も他のミニPCより高級感があり、価格もセールなどを利用すれば10万円以下で購入出来るなど、コストパフォーマンスにも優れており、性能・コスト・デザインの3つが揃ったミニPCなので、そういったミニPCを求めているユーザーには選択肢の1つとして候補に入れても良いモデルだと思います。
なお、価格は「Ryzen R7-8845HS + 32GB + 1TB」モデルが122,000円、「Ryzen R79-8945HS + 32GB + 2TB」モデルが158,000円で、記事投稿時点では最大26,700円オフで販売されている他、クーポンコード「TAISY021ST」を利用することで更に5%オフ(有効期限は2024年7月21日まで)、もしくは「TAISY0 GEEKOM」を利用することで更に5,000円オフで購入可能です。
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