「GEEKOM Air12 Lite」レビュー ー 事務処理用途なら十分な性能の「Intel N100」搭載格安ミニPC
GEEKOMが今年9月に発売したミニPC「GEEKOM Air 12 Lite」を提供頂いたので紹介します。
「GEEKOM Air 12 Lite」は、135.5×115.5×34.5mmという小さな筐体にIntel N100プロセッサを搭載したミニPC。プロセッサの性能は低いものの、公式ストアでの価格は3万円を切る29,990円で購入出来る格安モデルとなっています。
ラインナップは8GB RAM + 256GB SSDモデルのみで、詳細は以下から。
同梱品や外観デザイン
同梱品は左上から時計回りに、本体、電源アダプター、説明書等、VESAマウント用アダプタ、HDMIケーブル、電源ケーブルといった構成で、基本的に他のミニPCと変わりありません。
同社の他のモデルは120Wの電源アダプタが同梱されていることが多いものの、本製品は消費電力が低いので65Wの少し小さい電源アダプタが採用されています。BSYというメーカーのもので、調べてみると東芝のdynabookなどにも採用されている模様。アダプタの重さは240g。
電源ケーブルのコンセントプラグは同社のこれまでのモデルと同じくアース付きの3Pタイプ。国内で使用するには2Pタイプへの変換プラグが必須です。
「iPhone 16 Pro」と大きさを比較したものが下記画像。小さいことが良く分かります。
競合製品でもある同じIntel N100プロセッサを搭載したMinisforumのミニPC「Minisforum UN100P」との大きさを比較したものが下記画像。「GEEKOM Air12 Lite」は135.5×115.5×34.5mm、「Minisforum UN100P」は127.5×112.4×40mmで、「GEEKOM Air12 Lite」が若干横に大きいものの、その分薄いデザインとなっています。
本体重量は「GEEKOM Air12 Lite」は534gで、「Minisforum UN100P」は332gと、後述しますが、「GEEKOM Air12 Lite」は本体の全面がメタルフレームとなっているので、プラスチック製筐体を採用している「Minisforum UN100P」よりも重くなっています。
本製品は縦横のサイズだけでなく、高さが低いのも特徴。さらに、安価なモデルなのに筐体は全面が金属製となっており、チープさはありませんが、前面の電源ボタンだけ樹脂なので、ここも揃えたらもうちょっと一体感のあるデザインになったのかも。ただ、価格を考えると贅沢は言えないところ。
前面は左から電源ボタン、USB-A(USB 3.2 Gen 2)が2つ、9ピンフロントパネルヘッダー、3.5㎜マイク端子、3.5㎜イヤホン端子といった構成。3.5㎜ヘッドセット端子が前面に搭載されているモデルが多いですが、本製品はヘッドホンとマイクが別々の独立型端子が採用されています。
9ピンフロントパネルヘッダーは、フロントパネル用で、フロントパネルのケーブルを使用することで「AIR 12 Lite」のピンヘッダー拡張端子をUSBポート、音声端子、カードリーダー、電源LEDなどに変換可能です。
本体左側面にはケンジントンロック用の穴と吸気のための穴が開けられています。
右側面は吸気のための穴以外は特に何もなし。
背面は左からDP1.4、RJ-45イーサネットポート、USB-A(USB2.0)×2、USB-A(USB 3.2 Gen 2)×2、HDMI 2.0、電源ポートといった構成。低価格モデルの為か、USB-Cポートはなし。
底蓋は重量感のある金属製で、一見するとゴチャゴチャしてる感じですが、内部へのアクセスは四隅にあるネジを外すことで開封可能です。ネジは通常のプラスドライバーで緩めることが出来るのも別途工具を用意しなくても良いので楽です。
開封した図が下記画像ですが、ミニPCにしては珍しく、底蓋を留めていたネジは完全には外れない仕様となっており、底蓋にくっついたままでなくす心配がないのは良いところ。
搭載されているRAMは最近のミニPCに多く採用され始めているWooposit社製。台湾製のようで、DDR4-3200の8GBメモリが1枚刺さっています。RAMのスロットは1つだけで、最大16GBまで対応しています。
SSDもWooposit社製で、256GBのSSDが装着されています。ただ、 M.2 2280規格ではあるものの、SATAインターフェイスのもので最高転送速度は6Gbpsとなっているのが残念なところ。スロット自体はNVMeにも対応しているので、より高速なSSDが良い場合はNVMe M.2 SSDに換装可能です。
スペック
まず、「GEEKOM Air 12 Lite」の主なスペックをまとめると下記の通り。「Intel N100」はIntelの第12世代Coreシリーズで採用されたEfficiencyコア(高効率コア/Eコア)のみで構成された省電力性に優れるノートPC向けCPUで、PCゲームや動画編集など負荷の高い作業には向いていないものの、動画/音楽配信サイトの視聴や書類作成などの軽作業なら問題なくこなすことが可能。
GPUはCPU内蔵としてIntel UHD Graphicsを搭載しており、ディスプレイ出力については、DP1.4ポートとHDMIポートを利用することで4K/60Hzで最大2画面に同時出力が可能です。
次に、RAMは8GB DDR4 3200MHzがシングルチャネルで装着されていますが、最大16GBまで対応しており、CPUが非力なことを考慮すると出来れば16GBを積みたいところ。
GEEKOM Air 12 Liteの主なスペック
本体サイズ | 135.5×115.5×34.5㎜ |
CPU | Intel Processor N100 |
GPU | Intel UHD Graphics |
RAM | DDR4 3200MHz シングルチャネル 8GB (SO-DIMM スロット×1, 最大16GBまで) |
ストレージ | M.2 2280 Gen3 SATA 256GB(最大1TB/NVMe対応) |
ポート (後部) | DP1.4 RJ-45イーサネットポート USB-A(USB2.0)×2 USB-A(USB 3.2 Gen 2)×2 HDMI 2.0 電源ポート |
ポート (前面) | 電源ボタン USB-A(USB 3.2 Gen 2)×2 9ピンフロントパネルヘッダー 3.5㎜マイク端子 3.5㎜イヤホン端子 |
Wi-Fi | Wi-Fi 5 |
Bluetooth | Bluetooth 5.1 |
OS | Windows 11 Pro |
搭載CPU「Intel N100 Processor」の主なスペック
CPUコア総数 | 4コア |
スレッド数 | 4スレッド |
最大動作周波数 | 3.40GHz |
キャッシュ | 6MB |
GPU | Intel UHD Graphics |
GPU最大動的周波数 | 750MHz |
実行ユニット | 24 |
TDP | 6W |
次に、搭載されているSSDの情報を「CrystalDiskInfo」で表示したものが下記画像。分解画像のところでも書いた通り、SATAインターフェイスのM.2 2280 SSDが搭載されている為、最高転送速度は6Gbpsで頭打ちとなっているので、出来ればNVMe M.2 SSDに換装したいところ。
Wi-Fi/Bluetoothに関しては、Wi-Fi 5とBluetooth 5.1止まりとなっています。コストの関係で仕方ないのかもしれませんが、競合モデルの「Minisforum UN100P」がWi-Fi 6とBluetooth 5.2に対応している為、少し見劣りする印象。
また、OSには「Windows 11 Pro」が搭載されており、中国製の一部ミニPCではWindowsのライセンスに問題があるものも存在していますが、本製品の「Windows 11 Pro」のライセンス形態は「OEM」となっていることを確認済みです。GEEKOMの製品は何台かレビューしていますが、これまでレビューした同社製品は全てライセンス問題はないことを確認済みなのでこの点については安心して良いと思います。
各種ベンチマーク
実機で測定した各種ベンチマークソフトウェアの結果を紹介します。一部のテストは過去にレビューしたことがあるミニPCを比較しているものの、本製品以外は高性能なプロセッサを搭載したモデルばかりなのであまり参考にならないかもしれませんが、参考まで。
PC Mark 10
「PC Mark 10」はPCのアプリケーション実行における総合的なパフォーマンスを計測するベンチマークソフトで、日常的なPCでの作業やデジタルコンテンツを操作するときの性能に焦点を当てたテスト。
驚いたことに同じ「Intel N100」プロセッサを搭載し、16GB RAMやNVMe M.2 SSDを搭載してスペック面では上回っている「Minisforum UN100P」よりもスコアが良い結果に。何かの誤りかと思いなんどか試したものの、同じような結果でした。
スコア | 2862 |
CINEBENCH R23
「CINEBENCH R23」はCGレンダリング速度からCPU性能を測定するベンチマークで、CGレンダリングはマルチスレッド処理向きの作業であることからコア/スレッド数が多ければ多いほど性能が高くなる他、動作周波数に比例して性能が上がる傾向もあり、CPUの最大性能を比較するのに最適なベンチマーク。
「PC Mark 10」と同じく「CINEBENCH R23」の結果もマルチコアで「Minisforum UN100P」を大きく上回る結果に。こちらも何度かテストを行いましたが、同様の結果でした。
テスト項目 | スコア |
---|---|
CPU (シングルコア) | 762 |
CPU (マルチコア) | 2965 |
※「CINEBENCH」の最新バージョンである「CINEBENCH 2024」については、GPUのメモリ不足のエラーが出て計測出来ず。
GeekBench 6
「GeekBench 6」はCPU性能をメインで測定するベンチマークソフトで、シングルコアとマルチコアのスコアの他、GPU性能を測定するベンチマークとして「OpenCL」のスコアも測定可能。
GeekBenchのベンチマークはプロセッサごとのランキングが公開されており、他のプロセッサとのスコアの差など、ランキングの詳細はこちらをご覧下さい。また、OpenCLのスコアのランキングはこちら。
「GeekBench 6」の結果も「CINEBENCH R23」と同じく、「Minisforum UN100P」とはマルチコアのスコアに大きな開きがあり、予想以上の結果に。
テスト項目 | スコア |
---|---|
CPU (シングルコア) | 1201 |
CPU (マルチコア) | 3020 |
GPU (OpenCL) | 3260 |
CrystalDiskMark 8.0.5
「CrystalDiskMark 8」はストレージのデータ転送速度を測定できる定番ベンチマークソフトで、キューやスレッドの数を指定したシーケンシャルリード&ライト、ランダムリード&ライトの計測が可能。
何度も書いている通り、搭載されている256GB SSDはSATA 3.0接続なので、転送速度の理論値(約600MB/s)通りといった結果に。といってもWindowsのファイルエクスプローラーや設定アプリといった各種動作は詰まることもなく快適で、Officeのような事務作業も特にストレスを感じるような場面はありませんでした。ファイルサイズの大きいファイルなどを扱わない限りはあまり気にしなくても良いのかもしれません。
Blender
2D/3Dコンテンツ制作ツール「Blender」のベンチマークツールで、レンダリングにはCPUを選択し、サンプルは「monster」「junkshop」「classroom」の3種類を使用しました。
他のベンチマークと同じくプロセッサを搭載する「Minisforum UN100P」を上回る結果となり、「classroom」と「monster」は約2倍近いスコアに。
3D Mark
「3DMark」はハイエンドPCからタブレットPCまで利用できる定番3Dベンチマークソフト。DirectX 12を利用したベンチマークなどが用意されており、各テストの測定内容とスコアは下記の通りで、「Steel Nomad」のみエラーが出て測定出来ませんでした。
GPU性能は高くないので、Intel Coreシリーズなどに比べるとかなり低いスコアで、「Minisforum UN100P」と比較しても「Night Raid」のスコア以外はほぼ同じ結果に。
- Time Spy:ゲーミングPC向けのDirectX 12ベンチマーク
- Night Raid:「Time Spy」よりも軽量化されたテスト、CPU統合グラフィックスを備えた軽量デバイス向けのDirectX 12ベンチマーク
- Fire Strike:ゲーミングPC向けのDirectX 11ベンチマーク
- Steel Nomad:「Time Spy」に代わるベンチマークで、非レイトレーシングゲームの性能を測定するための推奨ベンチマーク
- Steel Nomad Light:CPU統合グラフィックスを備えた軽量デバイスの性能を測定するための推奨ベンチマーク
スコア | |
---|---|
Time Spy | 364 |
Night Raid | 4412 |
Fire Strike | 1090 |
Steel Nomad | ー |
Steel Nomad Light | 240 |
各種ゲームのベンチマーク
上の「3D Mark」のベンチマーク結果を見ても分かる通り、「FINAL FANTASY XV」や「ファイナルファンタジーXIV 黄金のレガシー」といった重たいゲームは最低の設定にしても“動作困難”といった感じ。製品の設計やコンセプト、ターゲット層がゲーム用途ではない為、想定内ですが、プレイが難しいことを改めて確認した形。
なお、少し軽めの「ドラゴンクエストX」については、グラフィック設定を“低品質&1920×1080”にすると“普通”といった評価結果で、一応遊ぶことは可能です。競合モデルの「Minisforum UN100P」では“低品質&1280×720”という設定でなければダメだったので、「GEEKOM Air12 Lite」の方が少し上の設定でプレイすることが可能です。
まとめ
搭載CPU/GPUが必要最低限のスペックなので、家で使用するには事務処理やウェブ閲覧、動画視聴といった用途に限定されてしまいますが、そういった作業のみであれば特に問題なく利用可能です。
また、ターゲットを絞っていることにより、価格が2万円台という高いコストパフォーマンスも魅力で、用途を絞ればコスパに優れたモデルとなっています。
搭載CPUの消費電力が低い為、店舗などでのデジタルサイネージ用といった使い方にも最適で、本体が薄いので、ディスプレイ裏など、オフィス、会議室、診療所など設置場所を取りたくない場合にも最適です。
競合モデルの「Minisforum UN100P」と比較すると、RAMの容量や搭載SSDのスペックでは見劣りしてしまうのですが、上述した通り、ベンチマークスコアは「Minisforum UN100P」を上回る結果に。RAMとSSDは後から換装も可能なので、換装すればもう少し良いパフォーマンスになるかもしれません。
最後に、GEEKOM製のミニPCでは冷却ファンの音が気になるモデルもあるのですが、本製品はCPUが省電力モデルといったこともあり、通常使用時だけでなく、ベンチマーク測定時などの高負荷時でも気になるほどの大きさになることはありません。耳を澄ませば聞こえますが、ファンの音が最大になるのは起動時のみで、電源を入れた際に一瞬だけファンが最大回転します。
価格
公式オンラインストアでの価格は29,990円(税込)と3万円を切る価格で販売されています。また、当ブログの読者限定で、表示価格から6%オフになるクーポンコード「KNNRAIR12L6F」も用意されており(2024年12月30日までの期間限定)、利用することで28,191円(税込)で購入可能です。
また、「Air 12 Lite」と同じ「Intel Processor N100」を搭載し、メモリがDDR5 SODIMM 16GB、ストレージがM.2 2280 PCle Gen 3 x4 512GBにそれぞれアップグレードされた上位モデルの「Air 12」も販売されており、他にもUSB-C(USB 3.2 Gen 2)ポート搭載で最大8K出力および3画面出力への対応やWi-FiもWi-Fi6にアップグレードされているのが特徴なので、より高スペックのモデルが欲しい方は「Air 12」を検討するのもアリかもしれません。
なお、記事投稿時現在はブラックフライデーのセールも12月2日まで開催中で、「Air 12」は通常39,990円(税込)のところが4,000円オフの35,990円(税込)で購入可能です。
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