「Minisforum UN100P」 実機レビュー ー 「Intel N100」搭載で事務処理ならこれで十分な2万円台の高コスパミニPC
Minisforumが先月に国内で発表・発売した最新のミニPC「Minisforum UN100P」を提供頂いたので紹介します。
「Minisforum UN100P」は、127.5㎜×112.4㎜×40㎜というかなり小さな筐体にIntel N100プロセッサを搭載したミニPC。公式ストアでの価格は割引込みで27,000円台からと格安モデルなのが特徴。
今回レビューするのは16GB RAMと512GB SSDを搭載した「Minisforum UN100P」の上位モデル。詳細は以下から。
同梱品や外観デザイン
価格を抑えた製品の為、パッケージもコストを抑えた素材やデザインを採用しており、高価なモデルに比べると簡素な造りとなっていますが、これはこれでシンプルなので個人的には好き。
同梱品は時計回りで左上から、本体、HDMIケーブル、説明書等、VESAマウント用の金具と2.5インチSSD/HDDを取り付ける為のネジなど、ACアダプターといった構成。
本体はプラスチック製の筐体が採用されており、価格を抑える為には致し方ないところですが、少しチープな感じもします。ただ、これは好みにもよるところかなと思います。なお、天板部分にはMinisforumのロゴと模様のようなものが施されています。
本体前面には、電源ボタン、3.5㎜イヤホンジャック、USB-C(USB 3.2 Gen1)×1、USB-A(USB 3.2 Gen1)×2に加え、Clear CMOSボタンが搭載されています。
本体左側面には、TFカードスロット(microSDカードスロット)とケンジントンロック用の穴が用意されている他、メッシュ状に吸気用の穴が開けられています。
本体右側面は基本的に吸気用のメッシュ穴以外は何もなし。
本体背面には排気口の他、各種ポートが搭載されており、左からRJ45 2500Mイーサネットポート、USB-A(USB 3.2 Gen2)×2、HDMI 2.1×2、電源入力といった感じ。
本体底面はVESAマウントを取り付ける為のネジ穴が用意されている他、低めのゴム足が4つ取り付けられており、安定性は問題なし。ミニPCは内部にアクセスするにはゴム足を外す必要があるモデルが多いものの、本製品はゴム足の更に外側にネジが剥きだしになっており、内部へのアクセスは四隅の4つのプラスネジを外すだけで可能です。
「iPhone 16 Pro」と大きさ比較したものが下記画像ですが、「Minisforum UN100P」の小ささが良く分かります。本体の重さは実測で332gとなっており、かなり軽量で、後述するACアダプターと合わせても500g未満となっています。
ミニPCはほとんどのモデルでACアダプタと電源ケーブルが別々に同梱されているのですが、本製品は消費電力が低い為か他のミニPCと異なり、コンセントプラグが一体型で36W出力のACアダプタが採用されています。コンセントへの差し込み部分は大きくなるものの、ケーブルの取り回しはこちらの方がスッキリしており、ケーブル込みの実測重量は159g。
内部構造
底蓋を外すとRAMやSSDにすぐにアクセス可能な設計となっています。
RAMは聞いたことがないTAKFUNGというメーカーのSO-DIMM DDR4 RAM 16GBが1枚装着されており、型番をググってみても出て来ませんでした。SSDもこれまた聞いたことがないHighRelというメーカーの型番「P3X00」の512GB M.2 2280 PCIe Gen 3×4 SSDが1つ搭載されています。
無線チップはIntel AX101が搭載されており、モデル番号は「AX101NGW」で、Wi-Fi 6とBluetooth 5.2をサポートしています。
2.5インチのSATA HDD/SSD(SATA 3.0 6.0Gb/s)を接続する為のコネクタが用意されており、HDDは底蓋に取り付けることが出来るようになっています。
基板の裏(本体天板側)には冷却ファンが搭載されており、ファンの直径は約5cm。写真ではファンの上に写っている黒いシートで覆われた箇所はヒートシンクでこの下にCPUが搭載されています。
スペック
まずは「Minisforum UN100P」の主なスペックをまとめると下記の通りで、「Intel N100」はIntelの第12世代Coreシリーズで採用されたEfficiencyコア(高効率コア、Eコア)のみで構成された省電力性に優れるノートPC向けCPUで、PCゲームや動画編集など負荷の高い作業には向いていませんが、動画/音楽配信サイトの視聴や書類作成などの軽作業なら問題なくこなすことが可能。
GPUはIntel UHD Graphicsを内蔵しており、ディスプレイ出力については、2つのHDMIポートと前面のUSB-Cポートを利用することで4K/60Hzで最大3画面に同時出力が可能です。
次に、RAMは16GB DDR4 3200MHzがシングルチャネルで装着されていますが、「Intel Processor N100」はDDR5やLPDDR5も対応しているので、換装すれば動くかもしれません。ただ、最大メモリサイズは16GBまで。
Minisforum UN100Pの主なスペック
本体サイズ | 127.5×112.4×40㎜ |
CPU | Intel Processor N100 |
GPU | Intel UHD Graphics |
RAM | DDR4 3200MHz シングルチャネル (SODIMM スロット×1, 最大16GBまで) |
ストレージ | M.2 2280 PCIe3.0 SSD×1(装着済み) 2.5 inch SATA HDD Slot ×1 (SATA 3.0 6.0Gb/s) |
ポート (後部) | RJ45 2500Mイーサネットポート USB-A(USB 3.2 Gen2)×2 HDMI 2.1×2 |
ポート (側面) | microSDカードスロット |
ポート (前面) | 3.5㎜イヤホンジャック USB-C(USB 3.2 Gen1)×1 USB-A(USB 3.2 Gen1)×2 Clear CMOSボタン |
Wi-Fi | Wi-Fi 6 |
Bluetooth | Bluetooth 5.2 |
OS | Windows 11 Pro |
搭載CPU「Intel N100 Processor」の主なスペック
CPUコア総数 | 4コア |
スレッド数 | 4スレッド |
最大動作周波数 | 3.40GHz |
キャッシュ | 6MB |
GPU | Intel UHD Graphics |
GPU最大動的周波数 | 750MHz |
実行ユニット | 24 |
TDP | 6W |
次に、搭載されているSSDの情報を「CrystalDiskInfo」で表示したものが下記画像。HighRel製の型番「P3X00」の512GB M.2 2280 PCIe Gen 3×4 SSDの設計上の性能は、シーケンシャル読込が最大3,500MB/s、シーケンシャル書込は最大3,100MB/sとなっています。実際の速度は後述するベンチマーク結果をご覧下さい。ストレージに関しては合計3TB(1TB SSDと2TB HDD)まで拡張可能です。
また、OSには「Windows 11 Pro」が搭載されており、中国製の一部ミニPCではWindowsのライセンスに問題があるものも存在していますが、本製品の「Windows 11 Pro」のライセンス形態は「OEM」となっていることを確認済みです。Minisforumの製品は何台かレビューしていますが、同社製品は基本的にこの件に関してはあまり気にしなくても良いと思います。
各種ベンチマーク
実機で測定した各種ベンチマークソフトウェアの結果を紹介します。一部のテストは過去にレビューしたことがあるミニPCを比較しているものの、本製品以外は高性能なプロセッサを搭載したモデルばかりなのであまり参考にならないかもしれませんが、参考まで。
PC Mark 10
「PC Mark 10」はPCのアプリケーション実行における総合的なパフォーマンスを計測するベンチマークソフトで、日常的なPCでの作業やデジタルコンテンツを操作するときの性能に焦点を当てたテスト。
スコア | 2699 |
CINEBENCH R23/2024
「CINEBENCH R23」はCGレンダリング速度からCPU性能を測定するベンチマークで、CGレンダリングはマルチスレッド処理向きの作業であることからコア/スレッド数が多ければ多いほど性能が高くなる他、動作周波数に比例して性能が上がる傾向もあり、CPUの最大性能を比較するのに最適なベンチマーク。
テスト項目 | スコア |
---|---|
CPU (シングルコア) | 763 |
CPU (マルチコア) | 1669 |
参考までに「CINEBENCH」の最新バージョンである「CINEBENCH 2024」のスコアは下記の通り。まだまだデータが少ないですが、基本的にスコアは「CINEBENCH R23」と同じ傾向に。
テスト項目 | スコア |
---|---|
CPU (シングルコア) | 49 |
CPU (マルチコア) | 104 |
GeekBench 6
「GeekBench 6」はCPU性能をメインで測定するベンチマークソフトで、シングルコアとマルチコアのスコアの他、GPU性能を測定するベンチマークとして「OpenCL」のスコアも測定可能。
GeekBenchのベンチマークはプロセッサごとのランキングが公開されており、他のプロセッサとのスコアの差など、ランキングの詳細はこちらをご覧下さい。また、OpenCLのスコアのランキングはこちら。
テスト項目 | スコア |
---|---|
CPU (シングルコア) | 1032 |
CPU (マルチコア) | 1627 |
GPU (OpenCL) | 3248 |
CrystalDiskMark 8.0.5
「CrystalDiskMark 8」はストレージのデータ転送速度を測定できる定番ベンチマークソフトで、キューやスレッドの数を指定したシーケンシャルリード&ライト、ランダムリード&ライトの計測が可能。
搭載されているHighRelの型番「P3X00」の512GB M.2 2280 PCIe Gen 3×4 SSDは、設計上の性能は読み込みが最大3,500MB/s、書き込みは最大3,100MB/sと案内されているものの、実際の数値はそこまで及ばず、SATA 3.0接続のSSDの転送速度の理論値(約600MB/s)よりちょっと速い程度。といってもWindowsのファイルエクスプローラーや設定アプリといった各種動作は詰まることもなく快適で、Officeのような事務作業も特にストレスを感じるような場面はありませんでした。ファイルサイズの大きいファイルなどを扱わない限りは問題ないかと思います。
3D Mark
「3DMark」はハイエンドPCからタブレットPCまで利用できる定番3Dベンチマークソフト。DirectX 12を利用したベンチマークなどが用意されており、各テストの測定内容とスコアは下記の通りで、「Steel Nomad」のみエラーが出て測定出来ませんでした。
- Time Spy:ゲーミングPC向けのDirectX 12ベンチマーク
- Night Raid:「Time Spy」よりも軽量化されたテスト、CPU統合グラフィックスを備えた軽量デバイス向けのDirectX 12ベンチマーク
- Fire Strike:ゲーミングPC向けのDirectX 11ベンチマーク
- Steel Nomad:「Time Spy」に代わるベンチマークで、非レイトレーシングゲームの性能を測定するための推奨ベンチマーク
- Steel Nomad Light:CPU統合グラフィックスを備えた軽量デバイスの性能を測定するための推奨ベンチマーク
スコア | |
---|---|
Time Spy | 359 |
Night Raid | 3575 |
Fire Strike | 1026 |
Steel Nomad | ー |
Steel Nomad Light | 236 |
各種ゲームのベンチマーク
上の「3D Mark」のベンチマーク結果を見ても分かる通り、「FINAL FANTASY XV」や「ファイナルファンタジーXIV 黄金のレガシー」といった重たいゲームは最低の設定にしても“動作困難”といった感じ。製品の設計やコンセプト、ターゲット層がゲーム用途ではない為、ベンチマークを取る前から分かっていたことですが…。
なお、少し軽めの「ドラゴンクエストX」については、グラフィック設定を低品質&1280×720の解像度であれば“普通”といった評価結果で、遊ぶことは可能です。
まとめ
搭載CPU/GPUが必要最低限のスペックなので、家で使用するには事務処理やウェブ閲覧、動画視聴といった用途に限定されてしまいますが、そういった作業のみであれば特に問題なく利用可能です。
また、ターゲットを絞っていることにより、価格が2万円台という高いコストパフォーマンスも魅力で、用途を絞ればお得なモデルとなっています。
さらに、消費電力が低い為、店舗などでのデジタルサイネージ用といった使い方にも最適かと思います。本体が非常に軽いので、モニターやテレビの裏に取り付けて、デスクトップのスペースを節約し、オフィス、会議室、診療所など設置場所を取りたくない場合にも最適です。
最後に、ミニPCで気になる発熱やファンの騒音ですが、このあたりは流石Minisforumといった感じで、ファンは余程のことがない限り気にならないレベル。微かにサーッと音がしているものの、部屋でテレビを点けていたりすると聞こえない程。発熱に関しても本体上部がほんのり温かくなる程度で、こちらも気にしなくて良さそうです。
モデル構成や価格
「Minisforum UN100P」は16GB RAM+256GB SSDモデルと今回レビューした16GB RAM+512GBモデルが用意されており、価格は16GB RAM+256GB SSDモデルが33,980円(税込)、16GB RAM+512GBモデルは36,980円(税込)ですが、公式ストアでは早くも値下げされており、27,190円(税込)と29,590円(税込)と3万円を切る価格で購入可能です。
なお、記事公開時点では、公式サイトでは16GB RAM+512GBモデルのみ販売されており、16GB RAM+256GB SSDモデルは11月10日出荷予定と案内されています。
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