【レビュー】Intel Core Ultra 9 285H搭載のパワフルなミニPC「Minisforum M1 Pro」

Minisforumが、新たに発売したミニPC「M1 Pro」を提供頂いたので紹介します。
「M1 Pro」は128×126×52mmのコンパクトサイズの筐体にIntelのCore Ultra 9 285HおよびCore Ultra 5 125Hを搭載した最新のミニPC。今回レビューをお伝えするのは前者のCore Ultra 9 285H搭載モデルで、本記事を公開した時点でMinisforumのIntel製プロセッサ搭載ミニPCの中では最上位モデルとなります。
外観デザインは航空機グレードのアルミニウム製で、陽極酸化処理された一体型のスッキリとしたデザインが特徴。筐体については、以前にレビューしたAMD製プロセッサを搭載する「AI X1」と同じものを使用しているようで、各種インターフェイスの位置や種類も同じとなっています。設計を共有することでコストダウンに繋げているものと思われます。
詳細は以下から。
Minisforum M1 Proの仕様
まず初めに「M1 Pro」の主なスペックは下記の通りで、両モデルの違いは搭載CPUが異なる以外ではRAMの対応速度となっています。
Core Ultra 9 285Hモデル | Core Ultra 5 125Hモデル | |
---|---|---|
本体サイズ | 128×126×52mm | 128×126×52mm |
CPU | Intel Core Ultra 9 285H | Intel Core Ultra 5 125H |
GPU | Intel Arc 140T | Intel Arc Graphics |
AIエンジン | Intel AI Boost 13TOPS | Intel AI Boost 11TOPS |
RAM | DDR5 SO-DIMM スロット×2 最大6,400MHz 合計最大128GBまで拡張可能 | DDR5 SO-DIMM スロット×2 最大5,600MHz 合計最大128GBまで拡張可能 |
ストレージ | M.2 2280 PCIe4.0 NVME SSD スロット×2 ※各最大4TBまで増設可 | M.2 2280 PCIe4.0 NVME SSD スロット×2 ※各最大4TBまで増設可 |
ポート (後部) | RJ45 2.5G イーサネットポート×1 HDMI 2.1×1 USB4 (Alt PD in 100W & PD out 15W)×1 DP2.0×1 OCuLink×1(PCIe 4.0×4) USB2.0 Type-A×1 | RJ45 2.5G イーサネットポート×1 HDMI 2.1×1 USB4 (Alt PD in 100W & PD out 15W)×1 DP2.0×1 OCuLink×1(PCIe 4.0×4) USB2.0 Type-A×1 |
ポート (前面) | USB3.2 Gen2 Type-A×2 3.5 mmコンボジャック×1 USB4 (Alt PD out 15W/40Gbps)×1 | USB3.2 Gen2 Type-A×2 3.5 mmコンボジャック×1 USB4 (Alt PD out 15W/40Gbps)×1 |
画面出力 | HDMI 2.1 x 1:8K@60Hz/4K@120Hz DP 2.0x 1:8K@60Hz/4K@120Hz USB4 x 2:4K@60Hz | HDMI 2.1 x 1:8K@60Hz/4K@120Hz DP 2.0x 1:8K@60Hz/4K@120Hz USB4 x 2:4K@60Hz |
Wi-Fi | Wi-Fi 7 | Wi-Fi 7 |
Bluetooth | Bluetooth 5.4 | Bluetooth 5.4 |
OS | Windows 11 Pro | Windows 11 Pro |
重さ | 600g | 600g |
今回紹介する「M1 Pro」には冒頭でも紹介した通りIntel Core Ultra 9 285Hを搭載しています。Intel Core Ultra 9 285Hは、Pコア6基/Eコア8基/LPEコア2基の16コア16スレッド、動作周波数は最大5.4GHz、キャッシュは24MB、TDPは45W。グラフィクスはプロセッサ内蔵のIntel Arc 140T GPU(8コア)を搭載しています。
AI演算用のNPU(Neural Processing Unit)の演算能力は13TOPSで、CPU+GPU+NPUを合わせたシステム全体の演算能力は99TOPSとなっており、MicrosoftのCopilot+ PCの要件を満たすにはNPUが40TOPS以上必要なので、「M1 Pro」はCopilot+ PCには未対応です。

RAMは今回レビューに使用した評価機には32GB(16GB×2)のDDR5-5600メモリが搭載されていますが、スロットとしてはDDR5-6400のデュアルチャネルメモリに対応しており、最大128GBまで拡張可能です。
搭載されているストレージはM.2 2280 PCIe4.0 NVME SSD 1TBですが、M.2 2280 PCIe4.0 NVME SSDスロットが2つ用意されており、各スロットとも最大4TBまでのSSDを搭載可能です。
インターフェースの特徴としては、USB4ポートを2つ搭載しており、両ポートとも最大40Gbpsのデータ転送と15WのUSB PD(Power Delivery)出力に対応する他、背面のUSB4ポートはUSB PDの100W入力にも対応していることから、付属のACアダプタだけでなく、USB PDの100W出力に対応したUSB充電器やディスプレイを接続しても起動させることが可能です。
さらに、同社製のミニPCではお馴染みのOCuLinkポートも搭載されており、外付けGPUボックスなどを接続してグラフィックス性能を向上させることが可能。ただ、OCuLinkポートは同梱されているアダプタをM.2スロットの空きスロットに挿して利用する形なので、空きのM.2スロットをOCuLinkポートとして使うか、SSDの増設用に使うかを選択する必要があります。
最後に、OSは「Windows 11 Pro (バージョン24H2)」を標準搭載し、「Windows 11 Pro」のライセンス形態は「OEM」となっていることを確認済みです。

外観デザインと内部構造など
外観は陽極酸化処理が施されたアルミ製の一体型デザインで、変な装飾などもなく、スタイリッシュなデザインとなっています。サイズは128×126×52mmで、一般的なミニPCといった感じの大きさ。重さは公称値は600gですが、実測値で663gでした。


同梱品は左上から時計回りに、冊子類、HDMIケーブル、VESAマウントアダプタ、OCuLinkアダプタ、電源ケーブルといった構成。(他にACアダプタも同梱されていますが、一緒に撮り忘れてしまいました…)

ACアダプタはDVE製で、大きさは実測で96×62×22㎜、重さは電源ケーブル込みで338gとなっており、出力は120W。上述した通り、本製品はUSB4ポートで電源供給も可能なので、ACアダプタやケーブルが煩わしい場合は100W出力対応のUSB-C充電器を用意するのもアリかもしれません。


本体前面には、10Gbpsに対応したUSB3.2 Gen2 Type-Aが2つ、15WのUSB PD出力に対応したUSB4が1つ、3.5mmコンボジャックが搭載されています。「AI X1」と同じ筐体を使っている為、「AI X1」に搭載されていたデジタルマイク用の穴(左右端の穴)がそのままとなっています。

左右側面は吸気用のメッシュ構造となっており、右側面にケンジントンロック用の穴が用意されています。


本体背面には、左から2.5Gbpsに対応した有線LANポートが1つ、DisplayPort 2.0が1つ、OCuLinkポートが1つ(標準では塞がれています)、USB PD 100W入力と15W出力に対応したUSB4が1つ、HDMI 2.1が1つ、USB2.0 Type-Aが1つ搭載されています。

底面も吸気用の穴が開けられており、VESAマウント用のネジ穴が用意されています。各コーナーにあるプラスネジを外すことで簡単に内部にアクセス可能です。同社のミニPCは比較的内部にアクセスし易い設計になっており、ゴム足を外したり、特殊な工具を用意する必要がないのは良いところ。

開封した図が下記画像ですが、底蓋の裏側のSSDやOCuLinkアダプタが接触する箇所には放熱用のシリコンが貼られており、その熱を冷却するための小型ファンも搭載されています。この冷却ファンなどのケーブルがマザーボードに接続されている為、開封する際はケーブルの破断やコネクタの損傷に気をつける必要があります。

テスト機に搭載されていたRAMはADATA製の16GB DDR5-5600 SODIMM(CBDAD5S560016G-BAD)×2枚で、MinisforumのミニPCにADATA製メモリが搭載されているのは珍しいかもです。ネットで調べるとGMKTec製のミニPCには同じメモリが搭載されているようです。


SSDはKingston製のM.2 2280 PCIe Gen.4 x4となる「OM8TAP41024K1-A00」で、メーカーの公称値はシーケンシャルリードが6100MB/s、シーケンシャルライトが5300MB/sとなっています。

SSDの裏に搭載されている無線モジュールのチップはIntelの「BE200」で、Wi-Fi7およびBluetooth 5.4をサポートしています。

上述した通り、OCuLinkアダプタは空きのM.2スロットに挿して利用する形で、空きのM.2スロットはOCuLinkポートと増設用のSSDのどちらかから選択する必要あり。


各種ベンチマーク
「M1 Pro」の実機で測定した各種ベンチマークソフトウェアの結果を紹介します。
比較対象として、同社のAMD製プロセッサを搭載した最新モデルの「AI X1 Pro」と「AI X1」の他、今回のテスト機に搭載されているCore Ultra 9 285Hの1世代前のプロセッサであるCore Ultra 9 185Hを搭載した「GEEKOM GT1 MEGA」とCore Ultra 5 125Hを搭載した「Minisforum UH125 Pro」のデータを掲載しています。
比較対象の各モデルの主な仕様は下記の通り。
CPU | コア/スレッド数 | GPU | RAM | |
---|---|---|---|---|
Minisforum M1 Pro | Core Ultra 9 285H | 16コア 16スレッド | Intel Arc 140T (8コア) | DDR5-5600 32GB |
Minisforum AI X1 | AMD Ryzen 7 255 | 8コア 16スレッド | Radeon 780M (12コア) | DDR5-5600 32GB |
Minisforum AI X1 Pro | Ryzen AI 9 HX 370 | 12コア 24スレッド | AMD Radeon 890M (16コア) | DDR5-5600 64GB |
GEEKOM GT1 MEGA | Core Ultra 9 185H | 16コア 22スレッド | Intel Arc graphics (8コア) | DDR5-5600 32GB |
Minisforum UH125 Pro | Core Ultra 5 125H | 14コア 18スレッド | Intel Arc graphics (7コア) | DDR5-5600 32GB |
PC Mark 10
「PC Mark 10」はPCのアプリケーション実行における総合的なパフォーマンスを計測するベンチマークソフトで、日常的なPCでの作業やデジタルコンテンツを操作するときの性能に焦点を当てたテスト。
有料版の「PCMark 10 Advanced Edition」では、「Essentials」「Productivity」「Digital Content Creation」「Gaming」の4つのテストグループのベンチマークを測定でき、各テストのスコアと総合スコアで性能を表します。各テストグループの詳細は下記の通り。
- Essentials
- PCの基本性能を測るテストグループで、アプリの起動速度を測る「App Start-up」、Webブラウジングに関連する処理性能を測る「Web Browsing」、複数の参加者によるビデオ会議を想定し、処理に関連する性能を測る「Video Conferencing」という合計3つのワークロードを実行。
- Productivity
- Office Suiteのようなビジネスアプリの処理性能を測るテストグループで、ワープロソフトの性能を測る「Writing」と、表計算ソフトの性能を測る「Spreadsheets」という2つのワークロードを実行。
- Digital Content Creation
- コンテンツ制作作業を想定したテストグループで、写真編集に関する性能を計測する「Photo Editing」、動画編集の性能を計測する「Video Editing」、3Dグラフィックスの表示とレイトレーシングによるレンダリングの性能を調べる「Rendering and Visualization」という3つのワークロードを実行。
- Gaming
- ゲームの実行に関わる性能を測るテストグループで、Futuremark製の3Dグラフィックスベンチマークソフト「3DMark」をPCMark 10向けにカスタマイズしたものが入っており,「Fire Strike」プリセットを実行。
「M1 Pro」の各テストグループの結果は下記の通りで、下記のスコアであれば一般的なオフィス作業や簡単なメディアコンテンツ制作、写真、動画、その他のデジタルコンテンツ編集なども問題なくこなせる性能となっています。
テスト | スコア |
---|---|
総合スコア | 6894 |
Essentials | 10239 |
Productivity | 9134 |
Digital Contents Creation | 11414 |
Gaming | 6160 |
他のミニPCとの比較ですが、スコアが高いほど性能が高く、搭載プロセッサの世代や性能により順当といった結果となりました。ゲーム性能に関してはAMD製プロセッサの方が全体的に上回っている印象。

CINEBENCH 2024
「CINEBENCH 2024」はCGレンダリング速度からCPU性能を測定するベンチマークで、CGレンダリングはマルチスレッド処理向きの作業であることからコア/スレッド数が多ければ多いほど性能が高くなる他、動作周波数に比例して性能が上がる傾向もあり、CPUの最大性能を比較するのに最適なベンチマーク。
結果は下記の通りで、「PC Mark 10」のテストと似たような傾向ではあるものの、Ryzen AI 9 HX 370(12コア/24スレッド)を搭載した「Minisforum AI X1 Pro」には大きく劣る結果に。「M1 Pro」のCore Ultra 9 285Hは16コア/16スレッドなので、CPUそのものの性能に加え、スレッド数の差が数値に出た模様。
また、「CINEBENCH」のベンチマークは負荷が高く、ミニPCによっては冷却が追いつかずにサーマルスロットリングが発生することがかなり多いのですが、「Minisforum AI X1 Pro」は筐体サイズがミニPCの2倍近くと大きく、冷却性能も優れている為、CPU性能をギリギリまで引き出せていることがこのスコアの差に繋がっているものと予想されます。
<サーマルスロットリングとは??>
部品の破損を防ぎ、安定した動作を維持する為、CPUが過熱した場合に性能を低下させて温度を下げようとする機能
テスト項目 | スコア |
---|---|
CPU (シングルコア) | 127 |
CPU (マルチコア) | 989 |

GeekBench 6
「GeekBench 6」はCPU性能をメインで測定するベンチマークソフトで、シングルコアとマルチコアのスコアの他、GPU性能を測定するベンチマークとして「OpenCL」のスコアも測定可能。
本テストでは、CPU性能はRyzen AI 9 HX 370を搭載した「Minisforum AI X1 Pro」とほぼ同等の性能となっており、前世代のプロセッサであるCore Ultra 9 185H搭載の「GEEKOM GT1 MEGA」と比較して9〜25%の性能向上となっています。
テスト項目 | スコア |
---|---|
CPU(シングルコア) | 2997 |
CPU(マルチコア) | 14976 |
GPU(OpenCL) | 39670 |

なお、GeekBenchのベンチマークはプロセッサごとのランキングが公開されており、他のプロセッサとのスコアの差など、ランキングの詳細はこちらをご覧下さい。また、OpenCLのスコアのランキングはこちら。
3D Mark
「3DMark」はハイエンドPCからタブレットPCまで利用できる定番3Dベンチマークソフト。DirectX 12を利用したベンチマークなどが用意されており、各テストの測定内容とスコアは下記の通り。
- Time Spy:ゲーミングPC向けのDirectX 12ベンチマーク
- Night Raid:「Time Spy」よりも軽量化されたテスト、CPU統合グラフィックスを備えた軽量デバイス向けのDirectX 12ベンチマーク
- Fire Strike:ゲーミングPC向けのDirectX 11ベンチマーク
- Steel Nomad:「Time Spy」に代わるベンチマークで、非レイトレーシングゲームの性能を測定するための推奨ベンチマーク
- Steel Nomad Light:CPU統合グラフィックスを備えた軽量デバイスの性能を測定するための推奨ベンチマーク
「M1 Pro」の各テストの結果は下記の通り。
スコア | |
---|---|
Time Spy | 4045 |
Night Raid | 30894 |
Fire Strike | 7407 |
Steel Nomad | 812 |
Steel Nomad Light | 3244 |
GPU性能に関しては最近はAMD製プロセッサに押され気味だったので、今回もあまり期待していなかったのですが、全体的に上回る結果となっており、名誉を挽回した感じ。

FINAL FANTASY XV
2018年に発売された重量級のアクションRPG「Final Fantasy XV」のPC版が快適に動作するか否かを推し量るためのベンチマーク。基本的に4K解像度でのプレイは難しく、”1920×1080″の解像度でようやくプレイ出来るといったレベル。
設定 | スコア | 評価 |
---|---|---|
高品質 / 1920×1080 ウインドウ | 2830 | やや重い |
標準品質 / 1920×1080 ウインドウ | 3993 | 普通 |
他のミニPCとの比較ですが、「Minisforum AI X1 Pro」とほぼ同等のスコアで、記事投稿時点ではミニPCの中では最高レベルの性能となっています。

ファイナルファンタジーXIV 黄金のレガシー
「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー」を動作させた場合のパフォーマンスの指標となるスコアを測定出来るベンチマーク。上述した「Final Fantasy XV」ほどではないものの、解像度はフルHD(1920×1080)でなければプレイは厳しい状況ですが、フルHDであれば最高画質でもプレイ可能でした。
設定 | スコア | 評価 |
---|---|---|
1920×1080 最高品質 (デスクトップPC) | 4099 | 普通 |
1920×1080 高品質 (デスクトップPC) | 5259 | 普通 |
他のミニPCとの比較結果は、「Final Fantasy XV」とは逆でIntel製プロセッサ搭載モデルの方が良い結果に。Core Ultra 9 185H搭載の「GEEKOM GT1 MEGA」の方が良いスコアだったので何かの誤りかと思い何度か測定したものの、同じ結果でした。

ドラゴンクエストX
上記のFFシリーズのベンチマークよりも軽い「ドラゴンクエストX」のベンチマークのスコアは、最高設定の「最高品質 / 3840×2160 / ウインドウ」でスコアが6086で、評価は“快適”。ただ、こちらも旧世代のCore Ultra 9 185H搭載の「GEEKOM GT1 MEGA」やCore Ultra 5 125H搭載の「Minisforum UH125 Pro」の方が良いスコアとなりました。

モンスターハンターワイルズ
発売されたばかりの「モンスターハンターワイルズ」のベンチマークも試しに動かしてみました。最低環境でもGPUはGeForce GTX 1660/Radeon RX 5500 XTでVRAMは6GB以上が必須なゲームなので動作対象外となっており、動作は期待していないものの、様々な設定で試しに測定してみた結果をまとめたものが下記の通り。
設定 | スコア | 平均FPS | 評価 |
---|---|---|---|
2560×1440 / グラフィック最低 | 5487 | 31.37 | 設定変更が必要です |
1920×1080 / グラフィック最低 | 6459 | 38.36 | 設定変更が必要です |
1600×900 / グラフィック最低 | 7786 | 46.21 | 設定変更を推奨します |
1280×780 / グラフィック最低 | 8527 | 50.66 | 設定変更を推奨します |
グラフィック設定は最低で、解像度を下げても厳しい結果に。「モンスターハンターワイルズ」のベンチマークは実際の本編よりも軽いと言われている為、ベンチマークでこの結果であればプレイ出来ないと考えておいた方が良いと思います。
CrystalDiskMark 8.0.6
「CrystalDiskMark 8」はストレージのデータ転送速度を測定できる定番ベンチマークソフトで、キューやスレッドの数を指定したシーケンシャルリード&ライト、ランダムリード&ライトの計測が可能。
シーケンシャルリードが約6,000MB/s、シーケンシャルライトが約5,250MB/sといった結果に。メーカーの公称値通りで、全く同じSSDを搭載していた「AI X1」と同じく、過去にレビューしたミニPCの中では最速となっています。

GeekBench AI
「Ryzen AI 9 HX 370」は、AI演算用のNPU単体の演算能力が最大50TOPSで、CPU全体でも最大80TOPSとAIの演算能力が大幅に増強されているので、「GeekBench AI」のベンチマークも試してみました。
過去にレビューしたNPUを搭載したミニPCとも比較しており、各製品のNPUおよびAI演算性能の仕様は下記の通りですが、各プロセッサともNPUのAI演算性能は明らかにされているものの、CPUとGPUの個別のAI演算性能は明らかにされていない部分もあります。
CPU | NPU | NPUのAI演算性能 | GPUのAI演算性能 | システム全体のAI演算性能 | |
---|---|---|---|---|---|
Minisforum M1 Pro | Core Ultra 9 285H | Intel AI Boost | 13TOPS | 最大77TOPS | 最大99TOPS |
Minisforum AI X1 Pro | Ryzen AI 9 HX 370 | AMD Ryzen AI | 50TOPS | 非公開 | 最大80TOPS |
GEEKOM GT1 MEGA | Core Ultra 9 185H | Intel AI Boost | 11TOPS | 非公開 | 最大34TOPS |
Minisforum UH125 Pro | Core Ultra 5 125H | Intel AI Boost | 11TOPS | 非公開 | 最大34TOPS |
「GeekBench AI」はPCやスマホのAI性能を測定出来るベンチマークテストで、AIフレームワークは、ディープラーニングや機械学習モデルのようなAIモデルを表現するためのフォーマット「ONNX」とIntelが提供しているディープラーニング・モデルを最適化および展開するためのオープンソースのツールキット「OpenVINO」から選択可能。(※GPUの「OpenVINO」はIntel向けのフレームワークとなっているのでAMD製プロセッサは非対応)
Single Precisionは単精度(FP32)の計算における性能を示しており、一般的に画像処理など精度が必要なタスクで用いられ、Half Precisionは半精度(FP16)の計算性能を示しており、性能は高精度よりは低いですが、速度は向上するためリアルタイムアプリケーションなどに使用されます。最後に、Quantizedは量子化された計算(INT8など)の性能を示していて、精度が若干落ちる代わりに計算速度が向上するため、モバイルやエッジデバイスでのAI推論でよく使用されます。
まず、CPUとGPUのAI演算性能を測定した結果を比較したものが下記のグラフ。Core Ultra 9 285H以外のプロセッサはCPUとGPUの個別のAI演算性能の数値が公開されていない為、あくまでスコアで比較するしかないのですが、Core Ultra 9 285HはRyzen AI 9 HX 370とほぼ同等か、それを上回る結果となっています。この結果からNPU単体のAI演算性能はRyzen AI 9 HX 370がずば抜けていますが、CPU単体のAI演算性能はRyzen AI 9 HX 370よりもCore Ultra 9 285Hの方が高いこと予想出来ます。



また、Intelプロセッサではいつの間にかNPU単体のOpenVINOベンチマークが測定出来るようになっていたので、測定してみました。同じIntel AI BoostでもCore Ultra 9 185Hのは11TOPS、Core Ultra 9 285Hのは13TOPSと僅かながら性能が向上しているのですが、ベンチマークスコアもそれを確認出来る形となり、8〜40%の性能向上となっています。

まとめ
Core Ultra 9 285Hを搭載していることから、現状のミニPCでは最上位モデルの1つとなっており、事務処理や動画鑑賞から画像編集であれば高過ぎるほどのスペックとなっています。
GPU性能に関してはここ数世代はAMDに押されていた感があったものの挽回した感じで、GPU性能もミニPCの中では現状では最上位の1つに。ただ、あくまでCPU内蔵の為、「モンスターハンターワイルズ」といった最新のAAAタイトルは流石に難しく、一世代前のタイトルであれば設定次第ではプレイ出来るレベルといった印象。
OCuLinkを使う場合、M.2スロットが1つになってしまうのは残念ですが、OCuLinkを使って外付けのハイエンドGPUを接続することもできるので、ミニPCでグラフィックス性能を重視するユーザーは選択肢の1つとして候補に入れても良いのではないでしょうか。
マイナス面としては、高性能プロセッサを搭載したミニPCには多いのですが、他社に比べると冷却および排熱性能に優れたMinisforumをもってしてもCore Ultra 9 285Hの熱管理には限界があるようで、GPUのベンチマークテストをした際に頻度は多くないもののサーマルスロットリングが発生したことがありました。
AI処理性能に関しては、まだまだ使える人やアプリが限られているので、そこまで気にするほとではないものの、Intel製プロセッサを搭載したハイエンドミニPCを考えているユーザーにお勧めできる製品となっています。
Minisforumの公式ストアではCore Ultra 9 285H搭載モデルはOS無しのベアボーンキットが139,990円、64GB RAMと2TB SSDを搭載したハイスペックモデルが209,990円で販売されており、両モデルとも早くも値下げ中で、前者は111,990円、後者は167,990円で購入可能です。公式ストアでの出荷予定日は8月28日。
(※今回レビューした32GB+1TBモデルはあくまで評価用サンプルで、現時点では未発売となっています)
Amazonでは64GB RAMと2TB SSDを搭載したモデルのみ販売されており、価格は同じ209,990円ですが、クーポン利用で173,242円で購入可能で、8月31日発売予定と案内されています。
また、Core Ultra 5 125H搭載モデルは75,990円からで販売されています。
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