【レビュー】「MINISFORUM AI X1 Pro」ー Ryzen AI 9 HX 370/Copilotボタン/指紋認証/マイク/スピーカーの全部入りの世界初Copilot+PC認証済みAIミニPC
各種ベンチマーク
実機で測定した各種ベンチマークソフトウェアの結果を紹介します。IntelのノートPC向けCPUであるCore Ultra 5 125HやCore Ultra 9 185Hを搭載した最新のミニPCである「MINISFORUM UH125 Pro」と「GEEKOM GT1 MEGA」に加え、1世代古い「AMD Ryzen R7-8845HS」を搭載した「GEEKOM A8」との違いをチェックしてみました。
各モデルの主な仕様は下記の通り。
CPU | コア/スレッド数 | GPU | RAM | |
---|---|---|---|---|
MINISFORUM AI X1 Pro | Ryzen AI 9 HX 370 | 12コア 24スレッド | AMD Radeon 890M (16コア) | DDR5-5600 64GB |
GEEKOM GT1 MEGA | Core Ultra 9 185H | 16コア 22スレッド | Intel Arc graphics (8コア) | DDR5-5600 32GB |
MINISFORUM UH125 Pro | Core Ultra 5 125H | 14コア 18スレッド | Intel Arc graphics (7コア) | DDR5-5600 32GB |
GEEKOM A8 | Ryzen 7 8845HS | 8コア 16スレッド | AMD Radeon 780M (12コア) | DDR5-5600 32GB |
PC Mark 10
「PC Mark 10」はPCのアプリケーション実行における総合的なパフォーマンスを計測するベンチマークソフトで、日常的なPCでの作業やデジタルコンテンツを操作するときの性能に焦点を当てたテスト。
無料版の「PCMark 10 benchmark」では、「Essentials」「Productivity」「Digital Content Creation」の3つのテストグループのベンチマークを測定でき、各テストのスコアと総合スコアで性能を表します。各テストグループの詳細は下記の通り。
- Essentials
- PCの基本性能を測るテストグループで、アプリの起動速度を測る「App Start-up」、Webブラウジングに関連する処理性能を測る「Web Browsing」、複数の参加者によるビデオ会議を想定し、処理に関連する性能を測る「Video Conferencing」という合計3つのワークロードを実行。
- Productivity
- Office Suiteのようなビジネスアプリの処理性能を測るテストグループで、ワープロソフトの性能を測る「Writing」と、表計算ソフトの性能を測る「Spreadsheets」という2つのワークロードを実行。
- Digital Content Creation)
- コンテンツ制作作業を想定したテストグループで、写真編集に関する性能を計測する「Photo Editing」、動画編集の性能を計測する「Video Editing」、3Dグラフィックスの表示とレイトレーシングによるレンダリングの性能を調べる「Rendering and Visualization」という3つのワークロードを実行。
「AI X1 Pro」の各テストグループの結果は下記の通り。
テスト | スコア |
---|---|
総合スコア | 7588 |
Essentials | 10649 |
Productivity | 10237 |
Digital Contents Creation | 10877 |
次は他のミニPCとの比較ですが、スコアが高いほど性能が高く、総合スコアでは「AI X1 Pro」がトップのスコアとなりました。
1つ世代が古いCPUを搭載した「GEEKOM A8」と比べると総合スコアは上回りました。コンテンツ制作を想定するDigital Contents Creationが大きく伸びているものの、EssentialsとProductivityのスコアはほぼ同等といった結果で、Digital Contents Creationが伸びたことで総合スコアが伸びたような形に。
また、Core Ultra 9 185Hを搭載した「GEEKOM GT1 MEGA」と比べると逆にDigital Contents Creationのみ僅かながら及ばない結果に。

CINEBENCH R23/2024
「CINEBENCH R23」はCGレンダリング速度からCPU性能を測定するベンチマークで、CGレンダリングはマルチスレッド処理向きの作業であることからコア/スレッド数が多ければ多いほど性能が高くなる他、動作周波数に比例して性能が上がる傾向もあり、CPUの最大性能を比較するのに最適なベンチマーク。
結果は下記の通りで、CPU性能は現在発売されているミニPCの中ではトップクラスの性能であることが確認出来ます。
テスト項目 | スコア |
---|---|
CPU (シングルコア) | 2036 |
CPU (マルチコア) | 22179 |

参考までに「CINEBENCH」の最新バージョンである「CINEBENCH 2024」のスコアは下記の通り。まだまだデータが少ないですが、基本的にスコアは「CINEBENCH R23」と同じ傾向に。
テスト項目 | スコア |
---|---|
CPU (シングルコア) | 120 |
CPU (マルチコア) | 1247 |

GeekBench 6
「GeekBench 6」はCPU性能をメインで測定するベンチマークソフトで、シングルコアとマルチコアのスコアの他、GPU性能を測定するベンチマークとして「OpenCL」のスコアも測定可能。
結果は下記の通りで、CPU性能は「CINEBENCH」と同じく他のモデルを寄せ付けない性能ですが、GPU性能に関しては「GEEKOM A8」に比べると大きく向上しているものの、「GEEKOM GT1 MEGA」よりは劣る結果に。
テスト項目 | スコア |
---|---|
CPU (シングルコア) | 2972 |
CPU (マルチコア) | 15447 |
GPU (OpenCL) | 37777 |

なお、GeekBenchのベンチマークはプロセッサごとのランキングが公開されており、他のプロセッサとのスコアの差など、ランキングの詳細はこちらをご覧下さい。また、OpenCLのスコアのランキングはこちら。
3D Mark
「3DMark」はハイエンドPCからタブレットPCまで利用できる定番3Dベンチマークソフト。DirectX 12を利用したベンチマークなどが用意されており、各テストの測定内容とスコアは下記の通り。
- Time Spy:ゲーミングPC向けのDirectX 12ベンチマーク
- Night Raid:「Time Spy」よりも軽量化されたテスト、CPU統合グラフィックスを備えた軽量デバイス向けのDirectX 12ベンチマーク
- Fire Strike:ゲーミングPC向けのDirectX 11ベンチマーク
- Steel Nomad:「Time Spy」に代わるベンチマークで、非レイトレーシングゲームの性能を測定するための推奨ベンチマーク
- Steel Nomad Light:CPU統合グラフィックスを備えた軽量デバイスの性能を測定するための推奨ベンチマーク
「AI X1 Pro」の各テストの結果は下記の通り。
スコア | |
---|---|
Time Spy | 3486 |
Night Raid | 29198 |
Fire Strike | 8068 |
Steel Nomad | 524 |
Steel Nomad Light | 2960 |
GeekBenchのGPUベンチマークと同じく、「GEEKOM A8」に比べると順当に性能が上がっているものの、「Fire Strike」のテスト以外は「GEEKOM GT1 MEGA」よりも劣る結果となっており、これまでのベンチマークからGPU性能はIntelのCore Ultra 9 185Hの方が上ということが分かります。

FINAL FANTASY XV
2018年に発売された重量級のアクションRPG「Final Fantasy XV」のPC版が快適に動作するか否かを推し量るためのベンチマーク。基本的に4K解像度でのプレイは難しく、”1920×1080″の解像度でようやくプレイ出来るといった感じ。
設定 | スコア | 評価 |
---|---|---|
標準品質 / 2560×1440 ウインドウ | 2763 | やや重い |
高品質 / 1920×1080 ウインドウ | 3011 | 普通 |
標準品質 / 1920×1080 ウインドウ | 4080 | 普通 |
軽量品質 / 1920×1080 ウインドウ | 5446 | やや快適 |
他のミニPCとの比較ですが、「Final Fantasy XV」に関しては他のモデルを上回る結果に。

ファイナルファンタジーXIV 黄金のレガシー
「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー」を動作させた場合のパフォーマンスの指標となるスコアを測定出来るベンチマーク。上述した「Final Fantasy XV」ほどではないものの、解像度は”1920×1080″でなければプレイは厳しい状況ですが、画質を落とすことで問題なくプレイ可能なレベルとなっています。
設定 | スコア | 評価 |
---|---|---|
3840×2160 高品質 (デスクトップPC) | 1647 | 設定変更が必要 |
3840×2160 標準品質 (デスクトップPC) | 1708 | 設定変更が必要 |
1920×1080 高品質 (デスクトップPC) | 4907 | 普通 |
こちらは他のGPUベンチマークと同じ傾向の結果となり、「GEEKOM GT1 MEGA」よりも劣る結果に。

ドラゴンクエストX
上記のFFシリーズのベンチマークよりも軽い「ドラゴンクエストX」のベンチマークのスコアは、最高設定の「最高品質 / 3840×2160 / ウインドウ」でスコアが6242で、評価は“快適”となりました。
軽量のゲームなので基本的に4K解像度の最高品質で問題なくプレイ可能です。もっと快適にプレイしたい場合は画質設定を落とすか、解像度を2Kに落とすことで可能です。
設定 | スコア | 評価 |
---|---|---|
最高品質 / 3840×2160 / ウインドウ | 6242 | 快適 |
標準品質 / 3840×2160 / ウインドウ | 6252 | 快適 |
プレイ自体は問題ないレベルですが、スコアは「GEEKOM GT1 MEGA」だけでなく、より下位のCPUを搭載した「MINISFORUM UH125 Pro」をも下回る結果に。最初は間違いかと思い何度か計測してみましたが、同じ傾向でした。

モンスターハンターワイルズ
発売されたばかりの「モンスターハンターワイルズ」のベンチマークも試しに動かしてみました。最低環境でもGPUはGeForce GTX 1660/Radeon RX 5500 XTでVRAMは6GB以上が必須なゲームなので、動作は期待していないものの、最新CPUの内蔵GPUでどの程度動くのかを試してみた結果が下記の通り。
テストでは解像度とグラフィックスプリセットの設定を変更し、フレーム生成はオンにしています。テストする前から想像出来ていないものの、基本的に解像度は”1920×1080″以下、グラフィックスのプリセットも”低”以下でなければ厳しい状況ですが、一応プレイしようと思えば出来るのかも。
設定 | スコア | 平均FPS | 評価 |
---|---|---|---|
1920×1080 / グラフィック中 | 8558 | 50.05 | 設定変更を推奨します |
1920×1080 / グラフィック低 | 11582 | 67.79 | 問題なくプレイできます |
1920×1080 / グラフィック最低 | 11973 | 69.95 | 問題なくプレイできます |

CrystalDiskMark 8.0.5
「CrystalDiskMark 8」はストレージのデータ転送速度を測定できる定番ベンチマークソフトで、キューやスレッドの数を指定したシーケンシャルリード&ライト、ランダムリード&ライトの計測が可能。
シーケンシャルリードが約4,800MB/s、シーケンシャルライトが約3,900MB/sといった結果で、搭載されているKingstonのPCIe Gen 4対応の1TB NVMe SSD「OM8PGP41024Q-A0」の公称値は読み出しが最大3,700MB/秒、書き込みが最大2,600MB/秒と案内されている為、公称値以上の数値が出ていることに。PCI Express 4.0 x4対応SSDとしては特に高速ではなく、過去にレビューしたミニPCでこれ以上の数値を出すモデルもありましたが、通常使用では十分に快適に使える速度となっています。

GeekBench AI
「Ryzen AI 9 HX 370」は、AI演算用のNPU単体の演算能力が最大50TOPSで、CPU全体でも最大80TOPSとAIの演算能力が大幅に増強されているので、「GeekBench AI」のベンチマークも試してみました。
「GeekBench AI」はPCやスマホのAI性能を測定出来るベンチマークテストで、AIフレームワークは、ディープラーニングや機械学習モデルのようなAIモデルを表現するためのフォーマット「ONNX」とIntelが提供しているディープラーニング・モデルを最適化および展開するためのオープンソースのツールキット「OpenVINO」から選択可能。
Single Precisionは単精度(FP32)の計算における性能を示しており、一般的に画像処理など精度が必要なタスクで用いられ、Half Precisionは半精度(FP16)の計算性能を示しており、性能は高精度よりは低いですが、速度は向上するためリアルタイムアプリケーションなどに使用されます。最後に、Quantizedは量子化された計算(INT8など)の性能を示していて、精度が若干落ちる代わりに計算速度が向上するため、モバイルやエッジデバイスでのAI推論でよく使用されます。
ただ、あくまでCPUとGPUのAI演算性能を測定するものとなっており、「Ryzen AI 9 HX 370」の最大50TOPSを誇るNPUの性能を測定出来るものではないので注意が必要です。また、GPUの「OpenVINO」はIntel向けのフレームワークとなっているので、スコアがありません。
参考までに「Core Ultra 9 185H」や「Core Ultra 5 125H」との比較が下記の通り。「Core Ultra 9 185H」や「Core Ultra 5 125H」のAI演算性能はNPUを含むCPU全体で最大34TOPSであることが分かっているものの、CPUとGPUのAI演算性能は詳細な数値が明らかにされていないのですが、「Ryzen AI 9 HX 370」はCPU/GPUだけでもAI演算性能が高いことが良く分かる結果となっています。



まだまだ比較対象が少ない為、気になる方はGeekBenchの公式サイトで各デバイスの測定結果を比較してみて下さい。
Copilot+PC認証済み
「AI X1 Pro」は搭載する「Ryzen AI 9 HX 370」のCPU全体のAI演算性能が最大80TOPSと、Microsoftが提唱するCopilot+ PCの要件である40TOPSを大きく上回っていることに加え、Copilotボタンを本体に搭載したことでCopilot+PC認証を取得した初のミニPCであることが最大の特徴となっています。
Copilot+PC対応となったことで、「Windows 11 (バージョン24H2)」から搭載されたユーザーの操作を要所要所でスナップショット(スクリーンショット)として最大3ヶ月分を記録し、プロンプト(短い文章)を使って操作したファイルやアプリを探せる機能「リコール(Recall)」という機能が利用可能になりました。

他にも、Windows上で流れる音声を自動文字起こししてくれる「ライブキャプション」や、「ペイント」アプリでテキストプロンプトを入力したり、簡単なスケッチを描くことで、入力に基づいたアートワーク(イラスト)を生成できるコクリエーター機能、ビデオ通話中に顔を明るくしてライティングを改善する他、バックグラウンドの音声ノイズを除去できる「Windows Studio Effects」、「フォト」アプリのプリセットやテキストプロンプトによるAI画像編集機能など、Copilot+ PC専用の機能が利用可能で、それぞれがNPUでローカル処理できるようになっています。
(一部機能は英語のみの対応やMicrosoft 365のサブスクリプションが必要)
また、上述した通り、Copilot+PCに対応する為にマイクやスピーカー、Copilotボタンなどを搭載しているのが特徴で、Copilotボタンは同社が昨年発売した「Minisforum UH125 Pro」にも搭載されていましたが、マイクやスピーカーまで搭載したミニPCは珍しいです。
なお、Copilotボタンは押すとCopilotが素早く起動し、キーボードでの入力だけでなく、音声入力も可能。スピーカーを搭載しているので、音声で質問すると音声で回答してくれます。

まとめ
Copilot+PC認証、Copilotボタン、電源内蔵、指紋センサーなど他社製ミニPCではなかなか無い機能などを満載しているのが特徴で、液晶搭載モデルやゲーム特化モデルなど、様々な意欲的なモデルを投入しているMINISFORUMらしい1台といった印象。
また、最新の「Ryzen AI 9 HX 370」を搭載することでCPU性能はもちろんのこと、GPU性能も向上しており、記事投稿現時点ではミニPCの中ではIntelの「Core Ultra 9 185H」を搭載したモデルと同じく最高レベルの性能を持つモデルと言っても良いかもしれません。
さらに、ミニPCとしては初めてCopilot+PC認証を取得していることやCPU/GPU/NPUのAI演算性能が高いことも、今後、AI関連機能やNPU対応ソフトが増えていくことを考えると長く使えるモデルであることを意味しています。
(Copilot+PC対応が今すぐ必要かと問われたら、正直、一般のユーザーであればまだ様子見でも良いと思いますが…)
ミニPCで気になる冷却ファンの音に関しては、MINISFORUM製のミニPCは全体的に熱対策を十分に考慮して造られており、冷却ファンの音も大きくない印象ですが、本製品も温度と動作音は良好で、CPU温度は高負荷な状況でも80℃ほどまでしか上昇せず、ファンの動作音もベンチマークテスト時以外は気になるほどではなく、アイドル状態だとほぼ無音。
なお、価格はベアボーンキットが119,192円(税込)、RAMやストレージを搭載した製品版が149,592円(税込)からとなっており、ラインナップと価格は下記の通り。流石にこれだけの性能と機能を詰め込むとちょっと高めなのがネックですが、強力なCPU、電源内蔵によるスッキリとした配線、指紋センサーによるパスワード入力からの開放など、現状で考えられるミニPCに搭載可能なものを全て搭載してきた感じなので、お財布が許すのであればハイエンドミニPCの中ではオススメの1台だと思います。
- ベアボーンキット:119,192円(税込)
- 32GB+1TB:149,592円(税込)
- 64GB+1TB:166,392円(税込)
- 96GB+2TB:186,392円(税込)
購入や詳細は下記の公式ストアかAmazonをご覧下さい。
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