【レビュー】「GEEKOM XT12 Pro」 ー パワフルな第12世代Core i9プロセッサを搭載したミニPC
台湾のGEEKOMが今年の春に国内で発表・発売したミニPC「XT12 Pro」を提供頂いたのでレビューをお伝えします。
「XT12 Pro」は117x111x38.5㎜という約0.5Lのサイズの筐体の中に、Intelのモバイル向け第12世代Coreプロセッサ(Alder Lake)である「Core i9-12900H」と「Core i7-12650H」を搭載したミニPC。モバイル向け第12世代Coreプロセッサは2022年初めに投入された数世代前のプロセッサですが、ゲームをしなければまだまだパワフルなプロセッサとなっています。
今回レビューをお伝えするのは「XT12 Pro」の中でも上位モデルとなるCore i9-12900H搭載モデル。
外観や内部構造
まず同梱品は、写真左上から時計回りで、説明書など、本体、VESAマウンタ、HDMIケーブル、ACアダプタ、電源ケーブルといった感じで、ミニPCはどれもこんな感じの構成となっています。
電源ケーブルのコンセントは他のGEEKOM製ミニPCと同じくアース付きの3Pタイプ。国内で使用するには変換プラグが必須なので、将来的に国内向けモデルは2Pタイプのものを同梱して貰えると有り難い。
本体重量は実測554gで、他のミニPCと同じく電源は内蔵しておらず、120WのACアダプターが別途付属しています。ACアダプタのサイズは約97×63×22㎜で、重さはACアダプタのみで約257g、電源ケーブル込みで約382g。
本体の外観はホワイトカラーの天板とアルミ製筐体を採用したスタイリッシュなデザインで、Appleの初代Mac miniのような感じ。
前面には電源ボタンに加え、USB-A(USB 3.2 Gen 2/Power Delivery対応)、USB-A(USB 3.2 Gen 2)、3.5㎜ヘッドセット端子。
背面には左から電源入力、USB-C(USB 4 Gen3)、HDMI 2.0、有線LAN(2.5Gbps)、USB-A(USB 3.2 Gen 2)、USB-A(USB 2.0)、USB-C(USB 4 Gen3)、HDMI 2.0といったポートが用意されており、2つのHDMIと2つのUSB-Cポートを利用することで最大4つのディスプレイに出力が可能。
左側面は何もなく、通気の為、アルミ製筐体がメッシュ状になっています。
右側面も左側面と基本的に同じデザインだが、ケンジントンロック用の穴が設けられています。
底面は左右側面と同じメッシュ状のデザインで、ゴム足は横長のものが2つのみとなっていますが、安定性には問題なし。VESAマウントを利用してディスプレイの背面の取り付けることも可能です。
内部にアクセスするには底蓋を取り外す必要がありますが、ネジは通常のプラスネジなので別途特殊ドライバーを用意する必要がないのは良いところ。また、4つのネジは完全には外れない仕様となっており、ネジをなくさないよう配慮されています。
また、ミニPCは底蓋にアンテナ線などが取り付けられているものがあるのですが、本製品は特に何も接続されていない為、底蓋を簡単に全開することが可能。底蓋の裏面にはSSDが当たる箇所に熱伝導シリコンパッドのようなものが貼られています。
RAM(メモリ)はWooposit製で、チップの型番は「WPH41028A」ですが、検索しても出てこず。なお、今回レビューする16GB DDR4-3200 SODIMMが2枚の計32GB搭載されており、最大64GBまで拡張可能。
SSDもWooposit製で、2280サイズのM.2 SSD(NVMe PCIe Gen4 x4)が搭載されており、レビューしたモデルは1TBですが、最大2TBまで搭載可能。また、1TBのM.2 2242 SSD SATAを追加で増設可能。
Wi-Fi/BluetoothモジュールはSSDの下に搭載されており、Azurewaveの「AW-XB591NF」(中身はMediaTek MT7922A22M)が搭載されています。Wi-Fi 6EとBluetooth 5.2に対応。
1つ気になるのが、SSDの下にSDカードスロットが用意されていること。実際にSDカードを挿すと認識し、普通に使えるのですが、なぜかこのスロットがある本体右側面には穴が開いておらず、使えなくなっています。なぜスロットが用意されているにも関わらず、使用出来なくしてあるのかは不明。
スペック
「XT12 Pro」は上述した通り、Intelのモバイル向け第12世代Coreプロセッサ(Alder Lake)である「Core i9-12900H」と「Core i7-12650H」を搭載しており、今回レビューするモデルに搭載されている「Core i9-12900H」は14コア(Pコア×6+Eコア×8)の20スレッドで、動作周波数はターボブースト時で最大5.0GHzとなっています。
また、内蔵GPUとしてIntel Iris Xe Graphicsを搭載しており、内蔵GPUなのでゲームなどをするには性能に限界がありますが、USB4ポートの一つを使用して外部GPUを接続することが可能。
搭載プロセッサのスペック比較表
Core i9-12900H | Core i7-12650H | |
---|---|---|
CPUコア数 | 14コア (Pコア×6/Eコア×8) | 10コア (Pコア×6/Eコア×4) |
スレッド数 | 20 | 16 |
ターボ時最大周波数 | Pコア:5.0GHz Eコア:3.8GHz | Pコア:4.7GHz Eコア:3.5GHz |
ベース周波数 | Pコア:2.5GHz Eコア:1.8GHz | Pコア:2.3GHz Eコア:1.7GHz |
L3キャッシュ | 24MB | 24MB |
TDP | 45W | 45W |
GPU | Iris Xe Graphics | UHD Graphics |
GPU実行ユニット数 | 96 | 64 |
GPU周波数 | 1.45GHz | 1.40GHz |
また、OSには「Windows 11 Pro」が搭載されており、安価な中国製のミニPCにある「Windows」のライセンス問題を気にされる方もいると思いますが、「XT12 Pro」に搭載されている「Windows 11 Pro」のライセンス形態は「OEM」となっていることを確認済み。GEEKOMのミニPCのレビューは2モデル目ですが、2モデルとも「OEM」となっているので、同社の製品は信頼して良いと思います。
XT12 Proの主なスペック
本体サイズ | 117 x 111 x 38.5mm |
CPU | Intel Core i9-12900H Intel Core i7-12650H |
GPU | Intel Iris Xe Graphics Intel UHD Graphics |
RAM | DDR4-3200 SODIMM デュアルチャネル 32GB(最大64GB) |
ストレージ | M.2 2280 PCIe 4.0 SSD 1TB(装着/最大2TB) M.2 2230 PCIe 4.0 SSD(空/最大1TB) |
ポート (後部) | 1×Type-A(USB3.2 Gen2) 1×Type-A(USB2.0) 2×USB4 Type-C 2×HDMI 2.0 1×RJ45 5Gイーサネットポート |
ポート (前面) | 2×Type-A(USB3.2 Gen2) 1×3.5㎜ヘッドフォンジャック |
Wi-Fi | Wi-Fi 6E |
Bluetooth | Bluetooth 5.2 |
OS | Windows 11 Pro |
各種ベンチマーク
実機で測定した各種ベンチマークソフトウェアの結果を紹介します。一部のテストは過去にレビューしたことがある同じGEEKOMの「AMD Ryzen R7-8845HS」を搭載した最新ミニPC「GEEKOM A8」と、他社製品ではあるものの最新CPUの「Intel Core Ultra 5 125H」を搭載した「Minisforum UH125 Pro」とスコアを比較しています。
PC Mark 10
「PC Mark 10」はPCのアプリケーション実行における総合的なパフォーマンスを計測するベンチマークソフトで、日常的なPCでの作業やデジタルコンテンツを操作するときの性能に焦点を当てたテスト。どうしても最新のプロセッサを搭載したモデルと比較すると劣ってしまいますが、一般的な使用用途ではまだまだパワフルなモデルとなっています。
スコア | 5,583 |
CINEBENCH R23/2024
「CINEBENCH R23」はCGレンダリング速度からCPU性能を測定するベンチマークで、CGレンダリングはマルチスレッド処理向きの作業であることからコア/スレッド数が多ければ多いほど性能が高くなる他、動作周波数に比例して性能が上がる傾向もあり、CPUの最大性能を比較するのに最適なベンチマーク。「XT12 Pro」の「Core i9-12900H」はシングルコアは最新CPUとほぼ変わらないスコアとなりました。
テスト項目 | スコア |
---|---|
CPU (シングルコア) | 1699 |
CPU (マルチコア) | 10870 |
参考までに「CINEBENCH」の最新バージョンである「CINEBENCH 2024」のスコアは下記の通り。CPUのシングルコアは「AMD Ryzen 7 5800X」と同等、マルチコアは「Apple M2」を少し上回るスコアでした。
テスト項目 | スコア |
---|---|
CPU (シングルコア) | 99 |
CPU (マルチコア) | 577 |
GeekBench 6
「GeekBench 6」はCPU性能をメインで測定するベンチマークソフトで、シングルコアとマルチコアのスコアの他、GPU性能を測定するベンチマークとして「OpenCL」と「Vulkan」のスコアも測定可能。
GeekBenchのベンチマークはプロセッサごとのランキングが公開されており、他のプロセッサとのスコアの差など、ランキングの詳細はこちらをご覧下さい。また、OpenCLのスコアのランキングはこちらで、Vulkanのスコアのランキングはこちら。
テスト項目 | スコア |
---|---|
CPU (シングルコア) | 2362 |
CPU (マルチコア) | 10750 |
GPU (OpenCL) | 15677 |
GPU (Vulkan) | 18926 |
CrystalDiskMark 8.0.5
「CrystalDiskMark 8」はストレージのデータ転送速度を測定できる定番ベンチマークソフトで、キューやスレッドの数を指定したシーケンシャルリード&ライト、ランダムリード&ライトの計測が可能。
シーケンシャルリードが約4900MB/s、シーケンシャルライトが約4300MB/sといった結果で、NVMe x4 Gen 4の理論値(最大8GB/s)には及ばないものの、通常の使用であれば特に問題ない速度。
3D Mark
「3DMark」はハイエンドPCからタブレットPCまで利用できる定番3Dベンチマークソフト。DirectX 12を利用したベンチマークなどが用意されており、各テストの測定内容とスコアは下記の通り。
- Time Spy:ゲーミングPC向けのDirectX 12ベンチマーク
- Night Raid:「Time Spy」よりも軽量化されたテスト、CPU統合グラフィックスを備えた軽量デバイス向けのDirectX 12ベンチマーク
- Steel Nomad:「Time Spy」に代わるベンチマークで、非レイトレーシングゲームの性能を測定するための推奨ベンチマーク
- Steel Nomad Light:CPU統合グラフィックスを備えた軽量デバイスの性能を測定するための推奨ベンチマーク
スコア | |
---|---|
Time Spy | 1874 |
Night Raid | 17848 |
Steel Nomad | 176 |
Steel Nomad Light | 1253 |
FINAL FANTASY XV
2018年に発売された重量級のアクションRPG「Final Fantasy XV」のPC版が快適に動作するか否かを推し量るためのベンチマーク。標準品質では基本的に難しいと考えた方が良く、「軽量品質 / 1280×720 ウインドウ」の設定でなんとか動くといった感じ。
設定 | スコア | 評価 |
---|---|---|
標準品質 / 1920×1080 ウインドウ | 2280 | 重い |
軽量品質 / 1920×1080 ウインドウ | 2961 | やや重い |
軽量品質 / 1280×720 ウインドウ | 4204 | 普通 |
ファイナルファンタジーXIV 黄金のレガシー
「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー」を動作させた場合のパフォーマンスの指標となるスコアを測定出来るベンチマーク。「Final Fantasy XV」よりはまだ動作するものの、解像度は”1920×1080″でなければプレイは厳しい状況。
設定 | スコア | 評価 |
---|---|---|
3840×2160 高品質 (デスクトップPC) | 1230 | 設定変更が必要 |
3840×2160 標準品質 (デスクトップPC) | 1613 | 設定変更が必要 |
3840×2160 標準品質 (ノートPC) | 1664 | 設定変更が必要 |
1920×1080 高品質 (デスクトップPC) | 4000 | 普通 |
1920×1080 標準品質 (デスクトップPC) | 5023 | 普通 |
ドラゴンクエストX
上記のFFシリーズのベンチマークよりも軽い「ドラゴンクエストX」のベンチマークのスコアは「最高品質 / 1920×1080/ ウインドウ」でもスコアが9576で、評価は”とても快適”となりました。
3840×2160という解像度でも遊べないことはないものの、1920×1080に落とすことで快適にプレイ可能です。ただ、なぜか標準品質より最高品質の方がスコアが良かったです。
設定 | スコア | 評価 |
---|---|---|
最高品質 / 3840×2160 / ウインドウ | 3150 | 普通 |
標準品質 / 3840×2160 / ウインドウ | 2905 | やや重い |
最高品質 / 1920×1080 / ウインドウ | 9576 | とても快適 |
標準品質 / 1920×1080 / ウインドウ | 5673 | 快適 |
まとめ
ベンチマーク結果からは、ゲームは「ドラゴンクエストX」のような軽めのゲームであれば何とかプレイ出来るレベルなので、あまり期待しない方が良く、GPU性能が必要な作業よりも一般的な事務作業や動画を見たり、Webブラウジングするといった用途向けのモデルとなっています。CPUのパワーはあるので簡易的な写真編集や動画編集なども十分にこなせるものと思われます。(GPU性能が必要な場合、USB4経由で外部GPUを接続することも候補の1つ)
前にレビューした「A8」もそうでしたが、同社のミニPCで気になるのはファンの音で、ちょっとした作業の度にファンの回転数が上がる傾向があり、気になる人は気になるかもしれません。同社のミニPCは他社製よりも一回り小さいモデルが多く、デザイン面やコンパクトさでは他社より優れているものの、本体サイズをコンパクトにするとどうしても排熱性能に限界があり、冷却ファンに頼らざるを得ない設計となってしまう為、もう少し大きくても良いので放熱性能にも配慮しても良いのかと思います。ただ、ファンの音が気になると言っても「A8」ほどではありません。
良いところとしては、場所を取らずにどこでも設置することができる手の平サイズのコンパクトな筐体に、パワフルなプロセッサや32GB RAM、1TBストレージを搭載し、価格がセールなどを利用すれば8万円台から購入可能なコストパフォーマンスが魅力的。そのことから、たまにCPUパワーが必要な作業をし、普段は事務処理や動画鑑賞等を行うような使用方法で検討しているユーザーには選択肢の1つとして候補に入れても良いモデルだと思います。
なお、価格はCore i7搭載モデルは通常107,000円のところが92,900円に、Core i9搭載モデルは通常112,000円のところが97,900円で販売されており、現在はクーポンコード「KNNR5FF」を利用することで両モデルともさらに5%オフで購入可能です。(クーポンコードの期限は2024年9月30日まで)
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