「Minisforum UM750L Slim」 レビュー|5万円台のコスパに優れたミニPC

Minisforumが、今年5月に発売したミニPC「Minisforum UM750L Slim」を提供頂いたので紹介します。
「UM750L Slim」は130×126.5×50.4mmで容量0.8Lのコンパクトサイズの筐体にAMD Ryzen 5 7545Uを搭載したミニPC。ミドルレンジクラスのAPU(GPU統合型CPU)を搭載し、一般的な用途であれば十分なスペックのミニPCとなっています。
詳細は以下から。
Minisforum UM750L Slimの仕様
まず、「UM750L Slim」の主なスペックをまとめると下記の通り。
| 本体サイズ | 130×126.5×50.4mm |
| CPU | AMD Ryzen 5 7545U |
| GPU | AMD Radeon 740M |
| RAM | LPDDR5 6400MT/s 16GB (オンボード) |
| ストレージ | M.2 2280 PCIe4.0x4 NVME SSD 1TB ※空きスロット×1 ※合計最大4TBまで増設可 |
| ポート (後部) | RJ45 2.5G イーサネットポート×1 HDMI 2.1×1 USB4 (Alt PD in 65-100W & PD out 15W)×1 DP1.4×1 USB2.0 Type-A×2 |
| ポート (前面) | USB3.2 Gen2 Type-A×2 3.5 mmコンボジャック×1 |
| 画面出力 | HDMI 2.1 x 1:8K@60Hz/4K@120Hz DP 1.4x 1:4K@120Hz USB4 x 1:8K@60Hz/4K@120Hz |
| Wi-Fi | Wi-Fi 6E |
| Bluetooth | Bluetooth 5.2 |
| OS | Windows 11 Pro |
| 重さ | 670g |
「UM750L Slim」に搭載されているAMD Ryzen 5 7545UはAMDが2023年に投入した薄型モバイルPC向けAPUで、2年前のAPUになるものの、一般的な作業であればまだまだ十分な性能を備えています。AMD Ryzen 5 7545Uは6コア12スレッドでクロックは最大4.9GHz。6コアのうち2コアはZen 4アーキテクチャ、4コアはZen 4cアーキテクチャで構成されており、両コアで基本性能は変わらないものの、Zen 4cコアは消費電力が小さくなっています。
GPUは、CPU内蔵型のRadeon 740M(4コア)を搭載し、HDMI・DisplayPort・USB4ポートより最大3台の4K画面への出力が可能です。

RAMはLPDDR5-6400の16GBを搭載しているものの、同社のミニPCとしては珍しくオンボード仕様の為、換装や増設は出来なくなっています。
ストレージはPCIe 4.0×4規格のM.2 2280 NVME SSD スロットが2つ用意されており、1TB SSDが標準で取り付けられていますが、合計最大4TBまで増設。
ネットワークは2.5GbE、Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2。その他のインターフェイスは、USB-A(USB 3.2 Gen 2)× 2、USB4、USB-A(USB 2.0)× 2、3.5mm音声入出力で、同社のミニPCではお馴染みのOCuLinkは非搭載となっています。
OSはWindows 11 Proを搭載し、バージョンは最新の「25H2」がインストールされていました。「Windows 11 Pro」のライセンス形態は「OEM」となっていることを確認済みです。

外観デザインと内部構造など
本体デザインはシルバー一色で、一見すると金属製筐体のようにも見えますが、樹脂製となっており、コストダウンが図られています。130×126.5×50.4mmというサイズはミニPCとしは一般的なサイズで、大き過ぎず小さ過ぎずといった感じ。製品名に”Slim (スリム)”が付いていますが、スリムではないので注意が必要。本隊の重さは実測値で540gでした。


同梱品は、左上から時計回りに、説明書類、ACアダプタ、VESAマウント、電源ケーブル、HDMIケーブル、交換用のネジとゴム足といった感じで、交換用のネジとゴム足が付属しているのはこれまでで多数のミニPCを試用してきましたが、本製品が初。

ACアダプタは少し見えにくいですが、中国のKEYU POWER SUPPLY TECHNOLOGY製で、大きさは実測で120×52×33mm、重さは電源ケーブル込みで324gとなっており、出力は65W。本製品はUSB4ポートで電源供給も可能なので、ACアダプタやケーブルが煩わしい場合は65W以上の出力に対応したUSB-C充電器を用意するのもアリかもしれません。

本体前面は、電源ボタンの他、USB-A(USB 3.2 Gen 2)× 2と3.5mmコンボジャックのみといった構成。

左右側面はメッシュ構造となっており、冷却用の空気の取り入れ口となっています。


本体背面には、左から2.5GbE、HDMI2.1、USB4、DP 1.4、USB-A(USB 2.0)× 2といった構成。USB4ポートは40Gbpsのデータ転送、USB PDでの15W出力に加え、65~100WのPD給電にも対応しており、USB-C充電器やディスプレイからの給電で稼働させることも可能です。

底面も吸気口の穴が開けられており、VESAマウント用の穴が開けられています。ゴム足は四隅に配置されており、安定感あり。

内部にアクセスするには両面テープで接着されたゴム足を取り外し必要があり、ネジ自体は全て通常の+ネジなので、特殊な工具等は必要ありません。ゴム足も上述した通り、予備が同梱されているので、万が一無くしてしまった場合や破損してしまった場合に交換出来ます。

底蓋を開封する際はファンの電源ケーブルが基板に接続されているので、切断しないよう注意が必要です。冷却ファンが底面に取り付けられており、そのプレートにSSDの放熱用のシリコンが貼られています。また、珍しいのがRAMがオンボード(基板直付け)となっており、開封して見える範囲にRAMチップは搭載されていないため、基板の裏側に搭載されているものと考えられます。本機は16GBのRAMを搭載していますが、換装や増設は出来ないので注意が必要です。

テスト機に搭載されていたSSDは、Kingston製のM.2 2280 PCIe Gen.4 x4となる「OM8TAP41024K1-A00」。最近の同社のミニPCに多く採用されているSSDで、メーカーの公称値はシーケンシャルリードが6100MB/s、シーケンシャルライトが5300MB/sとなっています。

M.2 2280 NVME SSD スロットの空スロットが1つ用意されているので簡単に増設可能で、その下には無線モジュールが搭載され、チップはMediaTekの「MT7902」でWi-Fi 6EとBluetooth 5.2をサポートしています。

各種ベンチマーク
これまでのミニPCのレビューと同じく様々なベンチマークテストを行ってみましたが、搭載されている「AMD Ryzen 5 7545U」は流石にハイエンドモデルよりもワンランク、ツーランク落ちる性能で、特にGPU性能が低い印象でした。
まず、日常的なPCでの作業やデジタルコンテンツを操作するときの性能に焦点を当てたベンチマークソフト「PC Mark 10」で測定してみました。「Essentials」「Productivity」「Digital Content Creation」「Gaming」の4つのテストグループのベンチマークを測定でき、各テストのスコアと総合スコアで性能を表します。各テストグループの詳細は下記の通り。
- Essentials
- PCの基本性能を測るテストグループで、アプリの起動速度を測る「App Start-up」、Webブラウジングに関連する処理性能を測る「Web Browsing」、複数の参加者によるビデオ会議を想定し、処理に関連する性能を測る「Video Conferencing」という合計3つのワークロードを実行。
- Productivity
- Office Suiteのようなビジネスアプリの処理性能を測るテストグループで、ワープロソフトの性能を測る「Writing」と、表計算ソフトの性能を測る「Spreadsheets」という2つのワークロードを実行。
- Digital Content Creation
- コンテンツ制作作業を想定したテストグループで、写真編集に関する性能を計測する「Photo Editing」、動画編集の性能を計測する「Video Editing」、3Dグラフィックスの表示とレイトレーシングによるレンダリングの性能を調べる「Rendering and Visualization」という3つのワークロードを実行。
- Gaming
- ゲームの実行に関わる性能を測るテストグループで、Futuremark製の3Dグラフィックスベンチマークソフト「3DMark」をPCMark 10向けにカスタマイズしたものが入っており,「Fire Strike」プリセットを実行。
「UM750L Slim」の測定結果は下記画像の通り。「PC Mark10」のベンチマークスコアは、簡単な作業を行うための一般的なPCであれば「Essentials」のスコアが4,100以上、一般的なオフィス作業や簡単なメディアコンテンツ制作向けであれば「Productivity」のスコアが4,500以上、写真・動画などのデジタルコンテンツ編集向けであれば「Digital Content Creation」のスコアが3,450以上あれば良いとされており、どの項目も大きく上回っています。

下記は1万円ほど上の価格帯でAMD Ryzen 6800Hを搭載した「GEEEKOM A6」や過去にレビューしたハイエンドモデルとのスコアの比較グラフとなっています。
流石にハイエンドモデルには敵わないものの、「Productivity」のスコアは「GEEKOM A6」や「GEEKOM GT13 Pro 2025 Edition」とほぼ同じスコアとなっており、一般的な作業だけでなく、コンテンツ制作作業でもそれなりに使える性能となっています。

次に、ハイエンドPCからタブレットPCまで利用できる定番3Dベンチマークソフト「3DMark」でGPU性能を測定してみました。DirectX 12を利用したベンチマークなどが用意されており、各テストの測定内容とスコアは下記の通り。
| テスト | 測定内容 |
|---|---|
| Time Spy | ゲーミングPC向けのDirectX 12ベンチマーク |
| Night Raid | 「Time Spy」よりも軽量化されたテスト、CPU統合グラフィックスを備えた軽量デバイス向けのDirectX 12ベンチマーク |
| Fire Strike | ゲーミングPC向けのDirectX 11ベンチマーク |
| Steel Nomad | 「Time Spy」に代わるベンチマークで、非レイトレーシングゲームの性能を測定するための推奨ベンチマーク |
| Steel Nomad Light | CPU統合グラフィックスを備えた軽量デバイスの性能を測定するための推奨ベンチマーク |
「UM750L Slim」のスコアと共に、「PC Mark10」と同じく過去にレビューしたモデルとの比較が下記グラフ。CPU性能であれば「GEEEKOM A6」にも劣らない性能でしたが、流石にGPU性能は大きく劣る結果に。

各種ゲームのベンチマーク
いつもであれば複数のゲームタイトルのベンチマークをお届けするところですが、軽量な「ドラゴンクエストX」のベンチマークでも4K解像度では低品質でギリギリといったレベルで、「Final Fantasy XV」や「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー」といった少し重めのベンチマークテストでは2K解像度で画質を落としてやっとといった感じ。
| ベンチマークソフト | 設定 | スコア | 評価 |
|---|---|---|---|
| ドラゴンクエストX | 低品質/ 3840×2160 ウインドウ | 4057 | 普通 |
| Final Fantasy XV | 軽量品質 / 1920×1080 ウインドウ | 3117 | 普通 |
| ファイナルファンタジーXIV | 標準品質 / 1920×1080 (デスクトップPC) | 4080 | 普通 |



また、参考までに「原神」もプレイしてみましたが、4K解像度では画質「最低」でも30fpsがやっとといった感じで、2560×1440解像度で画質「最低」であれば平均60fpsでプレイ可能といった感じでした。
搭載SSDの性能
最後に、搭載されているSSDのパフォーマンスをストレージのデータ転送速度を測定できる定番ベンチマークソフト「CrystalDiskMark 9」を用いて測定してみました。
結果はシーケンシャルリードが約6,100MB/s、シーケンシャルライトが約5,250MB/sといった結果で、ほぼメーカーの公称値通り。Minisforumの最近のミニPCはこのレベルのSSDが搭載されていることが多く、これだけの数字が出ていれば通常使用であれば十分過ぎるくらいです。

まとめ

「UM750L Slim」は、性能面や樹脂製のボディ、オンボード型のRAM、OCuLinkの非搭載といったように様々な面でコストを抑える為の設計が採用されているものの、ミニPCとしては高速なSSDやUSB4ポートを搭載し、一般的な作業であれば十分なレベルの仕様となっています。逆にそういった使い方で想定して購入するユーザーには換装・増設可能なRAMやOCuLink、金属製のボディ等は必要ないかもしれない為、ある意味コストパフォーマンスに割り切った設計となっているのが特徴のモデル。
テストしていて驚いた点は動作音や発熱で、ミニPCは小さな筐体に様々な部品を詰め込んでいるので、どうしても熱が籠もりやすく、発熱を抑える為に冷却ファンの音も大きく鳴りがちなのですが、本機は高負荷なベンチマークテストを行った際でもCPU温度は86度ほどまでしか上昇せず、冷却ファンの音も気にならないレベルでした。
性能面に関しては、ゲームをせずネットや事務処理的な作業であれば全く問題ないレベル。
昨今の物価高騰でミニPCも価格が少し高くなっている印象で(実際、Minisforumも今月初めに値上げを実施)、1つ上のランクのモデルとなると7〜9万円といった価格帯となり、さらにここ1年ほどで投入された最新チップを搭載したモデルとなると10万超えが確実なので、少しでも安価である程度の性能で良いというミニPCを探している方にはオススメの1台となっています。
「UM750L Slim」の公式ストアでの通常価格は71,999円ですが、記事投稿時点では公式ストア・Amazonともに57,000円台で販売されており、公式ストアではブラックフライデーのセールで更に2,000円オフで購入可能です。


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